HPVワクチン(ヒトパピローマウイルス)

Human papillomavirus vaccine

HPVワクチン(ヒトパピローマウイルス)の基礎知識|効果・副反応・接種タイミングを小児科医が解説 - 岩間こどもクリニック(小児科・アレルギー科)

HPVワクチンとは

HPVワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染を予防するためのワクチンです。このウイルスは子宮頸がんや性器いぼなどの原因となることが知られています。HPVワクチンは、これらの病気の発症リスクを大幅に下げることができる有効な予防手段です。

HPVワクチンの導入によって、世界各地で子宮頸がんの発症率が顕著に低下しています。ワクチン接種は、特に性行為を始める前の若年層に対して推奨されています。ワクチンは体内に抗体を作ることで、HPVが体に侵入するのを防ぎ、長期的な健康を守る役割を果たします。

日本でも、子宮頸がんの予防に対する関心が高まっており、HPVワクチンの接種が定期接種として位置づけられています。適切なタイミングで接種することで、将来的な健康リスクを軽減することが期待されています。

子宮頸がんワクチンについて

子宮頸がんとは、子宮の入り口にあたる子宮頸部にできるがんのことです。
主な原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染です。日本では毎年、約1.1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約2,900人の女性が亡くなっています。
年代別に見ると、子宮頸がんは若い世代で発症する割合が比較的高いがんになります。その罹患者は20歳代から増え始めて、30歳代までにがんの治療で子宮を失い妊娠できなくなってしまう人も1年間に約1,000人おります。
(参考文献:『HPVワクチンの接種を逃した方に接種の機会をご提供します(2024年2月改訂版)』厚生労働省)

ヒトパピローマウイルスの感染リスクとは

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、非常に一般的なウイルスで、性行為を通じて感染します。実際、ほとんどの人が生涯のうちに一度はHPVに感染すると言われています。しかし、多くの場合、感染しても症状が現れず、自然に体外へ排出されます。

問題は、一部のHPVが「高リスク型」と呼ばれ、がんの原因となることです。特に子宮頸がんの原因となる16型と18型は、その代表例です。また、「低リスク型」のHPVは、性器いぼの原因になることがあります。

感染リスクを減らすためには、HPVワクチンの接種が有効です。また、定期的な子宮頸がん検診も重要です。HPVは症状が出にくいウイルスであるため、予防と早期発見が鍵となります。

HPVワクチンで予防できる病気とその仕組み

HPVワクチンを接種することで、いくつかの疾患を予防することができます。最も注目されるのが子宮頸がんです。子宮頸がんの主な原因であるHPV16型と18型に対して、HPVワクチンは高い予防効果を発揮します。

さらに、肛門がんや外陰がん、性器いぼといった病気の予防にも効果が期待されます。HPVワクチンは、ウイルスが体内に侵入するのを防ぐ抗体を作ることで、これらの病気を予防します。この抗体はHPVが体内に侵入した際に即座に反応し、感染を未然に防ぐ仕組みです。

HPVワクチンの種類

現在使用されているHPVワクチンには、9価、4価、2価の3種類があります。それぞれ予防できるウイルス型の数に違いがあります。


  • 9価ワクチン
    9つのHPV型(16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型、6型、11型)に対応しており、最も広範囲の予防効果があります。
  • 4価ワクチン
    HPV16型、18型、6型、11型に対応しています。性器いぼを引き起こす低リスク型の予防効果もあります。
  • 2価ワクチン
    HPV16型と18型に対応しており、子宮頸がん予防に特化しています。

    現在は、一般的に9価ワクチンが使用されています。

それぞれのワクチンに特徴があるため、接種するワクチンの選択は医師と相談のうえ決めることが大切です。

子宮頸がんとHPVワクチンの関係

子宮頸がんは、HPV感染によって引き起こされる病気です。特に高リスク型HPV16型と18型が原因となるケースが多く、全体の約70%を占めています。HPVワクチンは、この2つの型に対する予防効果が非常に高く、接種することで子宮頸がんの発症リスクを大幅に低減します。

また、HPVワクチンはがんそのものを治療するものではありませんが、感染の予防によってがんの原因を取り除くことができます。このため、ワクチンと定期的な子宮頸がん検診を組み合わせることで、より高い予防効果が得られます。

接種のタイミングと対象年齢

HPVワクチンの接種は、セクシャルデビュー(初交)前に行うのが最も効果的です。これは、感染リスクが生じる前に免疫を獲得することで、ワクチンの予防効果を最大限に引き出せるためです。

定期接種

  • 対象者
    小学校6年生から高校1年生相当の年齢までの女性(高校1年生の年度末まで)

キャッチアップ接種

  • 対象者
    平成9年度生まれから平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性

※過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない方
※令和4(2022)年4月~令和8(2026)年3月末まで
※令和7年(2025年)3月末までに初回接種をされた方は、令和8年(2026年)3月まで期間が延長されます。

一般接種

成人になってからの接種も可能ですが、効果はやや低下する可能性があります。
これは、すでにHPVに感染している場合、ワクチンが予防効果を発揮できないためです。
ただし、感染していないHPV型に対する予防効果は期待できますので、成人でも接種を検討する価値があります。

HPVワクチンの効果はどれくらい持続するのか

HPVワクチンは長期間にわたる効果が期待されるワクチンです。現在の研究では、接種後10年以上にわたり高い予防効果が持続することが確認されています。

免疫学的な観点から見ると、HPVワクチンは体内に強力な抗体を作り、ウイルスの侵入を防ぎます。接種後数年が経過しても、抗体のレベルは維持されており、感染予防効果が持続します。

ただし、個人差があるため、将来的な追加接種の必要性については、さらなる研究が進められています。現在接種を受けた世代における長期データが蓄積されつつあり、この結果が将来の推奨に反映されることが期待されています。

副反応と安全性

HPVワクチンに伴う副反応は、多くの場合、軽微で一過性のものです。主な副反応としては、接種部位の腫れや痛み、軽い発熱、倦怠感などが報告されています。これらの症状は数日以内に治まることがほとんどです。

稀に、重篤な副反応が報告されることもありますが、発生率は非常に低いとされています。例えば、アナフィラキシー反応(急性のアレルギー反応)は100万人に1人以下の頻度で発生するとされています。ワクチン接種後の観察期間を設けることで、このような事態に迅速に対応できる体制が整えられています。

HPVワクチンの安全性は、世界中の多くの研究で確認されています。日本でも、厚生労働省が公表するデータや国際的な研究結果をもとに、ワクチンのリスクとベネフィットが評価されています。その結果、HPVワクチンは子宮頸がん予防において非常に有効かつ安全な手段とされています。

世界と日本のHPVワクチン普及率

HPVワクチンの普及率は国によって大きく異なります。オーストラリアやイギリスなどでは、HPVワクチン接種プログラムの成功により、接種率が80%を超える国もあります。これにより、子宮頸がんの発症率が著しく低下していることが確認されています。

一方、日本では一時的にHPVワクチンの接種率が低下した時期がありました。2013年に厚生労働省が「積極的勧奨を差し控える」と発表したことがその一因です。この期間中、ワクチンの安全性に対する誤解や不安が広まり、接種率が急激に低下しました。

近年では、再び接種率を向上させる取り組みが進められています。厚生労働省は積極的勧奨を再開し、公費助成による接種が行われています。また、学校や医療機関を通じた啓発活動も強化されています。

HPVワクチン接種の費用と助成制度について

日本では、HPVワクチンの接種が公費で実施される場合、対象者は無料で接種を受けることができます。この公費助成は、主に中学1年生に相当する女子を対象としています。対象外の年齢であっても、一部自治体では助成制度が設けられている場合があります。

また、キャッチアップ接種と呼ばれる制度もあります。これは、過去にHPVワクチンを接種する機会を逃した人が、一定の条件を満たす場合に無料で接種を受けられる制度です。この制度を利用することで、接種率の向上が期待されています。

費用に関しては、助成制度が適用されない場合でも、医療機関によって異なりますが、通常1回の接種で1万円から2万円程度かかります。3回接種が必要な場合はその合計が必要となります。費用が負担となる場合でも、助成制度や医療費控除の活用を検討することで、経済的負担を軽減できる可能性があります。

HPVワクチン接種後の注意点

HPVワクチン接種後には、いくつか注意すべきポイントがあります。まず、接種直後はアナフィラキシーなどの稀な副反応に備えるため、15分程度クリニックで様子を見ることが推奨されています。この観察期間中に問題が起きることはほとんどありませんが、医療機関にいることで迅速に対応できる環境が整っています。

また、接種部位には一時的に腫れや痛みが現れることがあります。これはワクチンが体内で免疫反応を引き起こしている正常な過程であり、通常は数日以内に治まります。腫れや痛みが強い場合は、冷却したタオルをあてるなどの対応が有効です。

さらに、激しい運動は接種後1〜2日は控えることが勧められます。これにより、接種部位への負担を軽減できます。日常生活で異常が見られた場合は、医師に相談することを忘れないようにしてください。

HPVワクチン接種について保護者が知っておくべきこと

HPVワクチンは、子どもの将来の健康を守るために重要な予防手段です。しかし、一部の保護者は副反応やワクチンの効果について不安を感じることもあります。そのため、正しい情報を得ることが大切です。

まず、HPVワクチンは安全性と有効性が多くの研究で確認されています。接種によって予防できる病気には、子宮頸がんのほか、性器いぼや肛門がんなども含まれます。これらの病気を防ぐことは、子どもの将来の生活の質を大きく向上させる可能性があります。

また、副反応が気になる場合は、接種を受ける前に医師に詳しく相談することで不安を軽減できます。保護者が理解を深めることで、安心して接種を進めることができます。

医師に相談するときのポイント

HPVワクチンの接種を検討する際には、事前に医師に相談して疑問点を解消することが大切です。具体的には、以下のようなポイントを質問してみましょう。


  • 接種スケジュール
    接種間隔や完了までに必要な期間について詳しく聞いておくと安心です。
  • 副反応のリスク
    ワクチン接種後にどのような副反応が起こり得るのか、事前に理解しておくことで、冷静に対応できます。
  • 適切なワクチンの選択
    医療機関で提供されるワクチンの種類を確認し、その特徴について説明を受けましょう。
  • 既往症との関連
    ozがアレルギーや持病を持っている場合、接種が可能かどうかも確認しておくことが重要です。

医師への相談を通じて、ワクチン接種に対する安心感を持ちながら適切な判断を下すことができます。

学校や地域でのHPVワクチン啓発の重要性

HPVワクチンの普及を促進するためには、学校や地域での啓発活動が重要な役割を果たします。学校でワクチンの重要性を伝える授業や講演会を実施することで、子どもたちだけでなく保護者への理解も深まります。

地域では、自治体や医療機関が主導するキャンペーンが効果的です。例えば、接種期間の周知や、接種可能な医療機関の案内を行うことで、接種率を向上させることができます。また、ワクチン接種経験者の声を共有することも、接種への不安を解消する一助となります。

こうした活動を通じて、HPVワクチンの重要性が広く理解され、接種率の向上と子宮頸がんの予防が進むことが期待されます。

岩間こどもクリニックのHPVワクチン接種のサポート

岩間こどもクリニックでは、HPVワクチン接種に関するサポートを行っています。接種を希望される方には、ワクチンの効果や副反応について詳しく説明し、疑問や不安を解消できる環境を提供しています。

また、接種スケジュールの管理やアフターケアも充実しており、接種後のフォローアップも万全です。特に初めて接種を受けるお子さまやその保護者の方に対しては、安心して接種を受けられるように心掛けています。HPVワクチンについて詳しく知りたい方は、ぜひ岩間こどもクリニックまでお問い合わせください。

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