プール熱(咽頭結膜熱)

Pharyngoconjunctival_fever

プール熱(咽頭結膜熱)の症状・原因・予防法を徹底解説|家庭と学校での感染対策 - 岩間こどもクリニック(小児科・アレルギー科)

プール熱(咽頭結膜熱)とは

プール熱(咽頭結膜熱)とは、アデノウイルスによって引き起こされる感染症の一つです。主に夏場に流行することが多く、プールを介して集団感染することがあるため「プール熱」と呼ばれていますが、プールに限らず、家庭内や学校、保育園など人が集まる場所でも広がることがあります。

正式な医学的名称は「咽頭結膜熱」といい、咽頭(喉)と結膜(目)に炎症を引き起こすのが特徴です。発熱や喉の痛み、目の充血や目やになどの症状が現れるため、風邪や結膜炎と混同されやすいですが、感染力が強く、集団感染を引き起こすリスクが高いため、注意が必要です。

プール熱の原因ウイルスと感染経路

プール熱の原因は、アデノウイルスと呼ばれるウイルスです。このウイルスには複数の型が存在し、主に「アデノウイルス3型」「7型」「4型」がプール熱を引き起こします。アデノウイルスは環境中でも比較的安定しており、感染力が非常に強いウイルスです。

感染経路

プール熱の感染経路は主に以下の3つです。

  • 接触感染
    感染者が触れた物(タオル、ドアノブ、玩具など)にウイルスが付着し、それに触れた手を介して口や目にウイルスが侵入します。
  • 飛沫感染
    感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスが飛び散り、それを吸い込むことで感染します。
  • プール水を介した感染
    プールの水が十分に消毒されていない場合、感染者のウイルスが水を介して他の人に感染することがあります。

プール熱は特に幼児や小児に多く見られますが、免疫が低下している大人も感染することがあります。感染力が強いため、予防策を徹底することが重要です。

プール熱の主な症状と経過

プール熱は、主に以下の症状が特徴的です。これらの症状は、感染後約5〜7日の潜伏期間を経て現れます。

  • 高熱(38〜40℃)
    喉に炎症が起こるため、飲み込むときに痛みを感じることがあります。喉の腫れや赤みが見られることが多いです。
  • 喉の痛み(咽頭炎)
    喉に炎症が起こるため、飲み込むときに痛みを感じることがあります。喉の腫れや赤みが見られることが多いです。
  • 目の症状(結膜炎)
    目の充血、目やにが増える、目のかゆみや痛み、涙が止まらないなど、これらの症状は両目に現れることが多く、朝起きたときに目やにで目が開かないこともあります。
  • 全身の倦怠感や食欲不振
    熱や喉の痛みに伴って全身がだるくなり、食欲が低下することがあります。

症状の経過

  • 発症から1〜5日
    高熱と喉の痛み、結膜炎の症状が強く現れる時期です。
  • 発症から5日以降
    熱が下がり、徐々に回復しますが、倦怠感が続くことがあるため無理な活動は控える必要があります。

プール熱の潜伏期間と感染力が強い時期

           

プール熱の潜伏期間は5〜7日程度です。感染者が症状を自覚しないまま他の人にウイルスを広げることがあるため、注意が必要です。

感染力が強い時期

  • 発症初期
    発熱や喉の痛みが強く現れる時期が最も感染力が高いとされています。
  • 症状が治まった後
    症状が回復した後も、ウイルスは2週間ほど便中に排出されることがあります。そのため、完治したように見えても感染源となることがあるため、手洗いや消毒を徹底することが重要です。

特に小さな子どもは手を口や目に触れることが多いため、家庭内での感染拡大を防ぐためにも、保護者がしっかりとした感染対策を行う必要があります。

プール熱の診断方法と医療機関での対応

           

プール熱は風邪や他の感染症と症状が似ているため、正確な診断が重要です。医療機関では、以下の流れで診断が行われます。

1. 問診と症状の確認

           

医師は、発熱や喉の痛み、目の充血といった特徴的な症状の有無を確認します。また、発症時期や周囲での感染状況、最近のプール利用歴についても問診が行われます。

2.目の診察と喉の確認

           

目の充血や目やにの状態を確認し、結膜炎の有無を診断します。さらに、喉の腫れや赤み、膿の有無を観察します。

3. アデノウイルスの検査

           

喉から分泌物を採取し、アデノウイルスの有無を確認します。この検査は短時間で結果が出るため、早期診断に役立ちます。

4. その他の検査

           

重症の場合や他の病気との鑑別が必要な場合は、血液検査や尿検査を行うこともあります。

プール熱の治療法と家庭でのケア

プール熱には特効薬が存在しないため、治療は対症療法が中心となります。症状に合わせて医師が適切な薬を処方し、自宅でのケアを行います。

治療法

  • 解熱剤の使用
    高熱が続く場合は、アセトアミノフェンなどの解熱剤が使用されます。ただし、必ず医師の指示に従いましょう。
  • 目のケア
    結膜炎の症状が強い場合は、目やにを清潔なガーゼやティッシュで優しく拭き取ります。医師の指示で抗菌目薬が処方されることもあります。
  • 水分補給
    高熱や喉の痛みにより、脱水症状を引き起こしやすいため、こまめな水分補給が重要です。経口補水液やスープ、ゼリー飲料などが効果的です。
  • 安静に過ごす
    体力の消耗を防ぐため、無理せず安静に過ごし、症状が治まるまでは外出を控えましょう。

家庭でのケアのポイント

  • 室内環境の調整
    加湿器を使用して湿度を保つことで、喉の痛みや咳の軽減に役立ちます。
  • 目の清潔を保つ
    目やにが出た場合は、こまめに拭き取り、目をこすらないように注意します。
  • 手洗いの徹底
    家族全員で手洗いを徹底し、感染拡大を防ぎましょう。

プール熱で気をつけたい合併症とリスク

プール熱は比較的軽症で済むことが多いですが、免疫力が低い乳幼児や高齢者では合併症を引き起こすことがあります。

主な合併症

  • 中耳炎
    喉や鼻から細菌が耳へ広がることで発症します。耳の痛みや発熱が続く場合は注意が必要です。
  • 肺炎
    アデノウイルスが気管支や肺にまで広がると、肺炎を引き起こすことがあります。咳が悪化したり、息苦しさが見られたら早急に受診しましょう。
  • 角結膜炎
    結膜炎が重症化すると、角膜にも炎症が広がり、視力低下を引き起こすことがあります。目の症状が長引く場合は眼科を受診することが大切です。

注意すべきポイント

  • 症状が1週間以上続く場合
    早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。
  • 家族内感染
    免疫のない家族は感染しやすいため、タオルや食器を共有しないように注意しましょう。

プール熱の流行時期と感染しやすい環境

プール熱は、夏場(6月〜9月)に流行することが多い感染症です。特にプールの利用が増える時期に感染が広がりやすくなります。しかし、冬場でも感染が見られるため、年間を通じて注意が必要です。

感染しやすい環境

  • プール施設
    塩素消毒が不十分なプールでは、ウイルスが水を介して広がることがあります。目や口に水が入ることで感染が起こるため、注意が必要です。
  • 学校や保育園
    子ども同士が密接に接触するため、飛沫感染や接触感染が広がりやすい環境です。
  • 家庭内
    感染者のタオルや玩具、手すりなどを通じて、家族内で感染が拡大することがあります。

プール熱を予防するためにできること

プール熱(咽頭結膜熱)の予防には、ウイルスへの接触を避けることが重要です。感染力が非常に強いため、日常生活での感染対策を徹底する必要があります。

  • 手洗いの徹底
    手洗いは、プール熱の感染を防ぐ最も基本的な方法です。外出後や食事前、トイレの後には、石けんを使って30秒以上かけて丁寧に手を洗いましょう。特に子どもは手を口や目に触れることが多いため、保護者がしっかりと習慣づけることが大切です。
  • タオルや身の回りの物を共有しない
    感染者が触れたタオルやハンカチ、衣類、食器などにはウイルスが付着している可能性があります。タオルや洗面道具は共有しないようにし、家庭内でも清潔に保つよう心がけましょう。
  • プール利用時の注意点
    ・プールの水が適切に塩素消毒されていることを確認する
    ・水中で目をこすらないようにし、ゴーグルを着用する
    ・プール後は目を洗い、シャワーで体全体をしっかり洗う
  • 咳エチケットの徹底
    感染者が咳やくしゃみをするとウイルスが飛び散ります。マスクの着用や、咳やくしゃみをする際にティッシュや袖で口元を覆う「咳エチケット」を徹底することが、周囲への感染防止につながります。
  • 免疫力を高める生活習慣
    日頃からバランスの良い食事や十分な睡眠、適度な運動を心がけ、免疫力を維持することも感染を防ぐ重要なポイントです。

学校や保育園での感染対策と登校の目安

プール熱は、子ども同士の接触が多い学校や保育園で集団感染が起こりやすい病気です。そのため、感染対策とともに、感染した場合の登校・登園の目安を理解しておくことが重要です。

学校・保育園での感染対策

  • 手洗い・うがいの指導
    学校や保育園では、定期的に手洗いやうがいを指導し、習慣化させることが必要です。
  • 物品の消毒
    感染者が触れたおもちゃや机、ドアノブなどはウイルスが付着している可能性があるため、アルコール消毒や次亜塩素酸水での清掃を徹底します。
  • 体調不良時の早期対応
    発熱や目の充血、喉の痛みなどの症状が見られた場合は、すぐに保護者に連絡し、早期に医療機関を受診するよう指導します。

登校・登園の目安

プール熱は感染力が強いため、症状が回復してもすぐに登校・登園することは避けなければなりません。学校保健安全法では、以下のように定められています。

「発熱や目の充血などの主要な症状が消失し、かつ2日以上経過していること」

症状が完全になくなるまでは自宅で安静に過ごし、感染拡大を防ぐことが大切です。医師の許可が出てから登校・登園するようにしましょう。

プール熱と似た症状を持つ病気との違い

プール熱は発熱や喉の痛み、目の症状が特徴ですが、他の病気とも症状が似ているため、区別することが重要です。以下は、プール熱と似た症状を持つ代表的な病気です。

  • 風邪
    風邪の場合、発熱や喉の痛みは軽度であることが多く、目の症状はほとんど見られません。
  • インフルエンザ
    インフルエンザでは急激な高熱や全身の筋肉痛、関節痛が見られるのが特徴です。一方、プール熱では目の充血や目やにが現れる点で区別がつきます。
  • はやり目(流行性角結膜炎)
    目の充血や目やにが主な症状ですが、発熱や喉の痛みがない場合が多いです。プール熱では発熱が伴うため、症状の違いで判断します。
  • 扁桃炎(急性扁桃炎)
    喉の痛みが強く、発熱が見られますが、目の症状はほとんどありません。喉に白い膿が見られることが多く、医師の診断で区別されます。

岩間こどもクリニックの診療サポートと感染対策

岩間こどもクリニックでは、プール熱(咽頭結膜熱)の診療と感染対策に力を入れています。お子さまの発熱や喉の痛み、目の異常が見られる場合は、速やかに診察を行い、アデノウイルスの迅速検査を実施します。

当クリニックのサポート内容

  • 早期診断
    症状に応じて迅速な検査を行い、正確な診断を提供します。
  • 家庭でのケアの指導
    安心してご自宅で療養できるよう、症状に合わせた対処法や生活指導を行います。
  • 感染予防対策
    院内感染を防ぐため、クリニック内の消毒や換気を徹底しています。

お子さまの体調や感染予防に関するご相談も随時受け付けておりますので、気になる症状がある際はお気軽にご相談ください。

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