乳児湿疹

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赤ちゃんの肌トラブル「乳児湿疹」|原因からスキンケア方法、注意点まで徹底解説 - 岩間こどもクリニック(小児科・アレルギー科)

乳児湿疹とは

乳児湿疹とは、生後間もない赤ちゃんに見られる皮膚のトラブルの総称です。赤ちゃんの皮膚は大人と比べて薄く、皮膚のバリア機能が未発達なため、さまざまな刺激に敏感に反応します。特に、生後すぐから1歳頃までは皮脂の分泌が多くなる時期と重なり、湿疹が現れやすくなります。

乳児湿疹は「成長の過程で誰にでも起こり得るもの」であり、多くの赤ちゃんが経験する皮膚の症状です。症状や程度には個人差があり、軽度の赤みだけで済む場合もあれば、ひどいかゆみやジュクジュクとした湿疹が現れることもあります。

適切なケアを行うことで症状は落ち着くことがほとんどですが、症状が長引く場合や悪化する場合は、アトピー性皮膚炎など他の皮膚疾患と区別する必要があります。

乳児湿疹が出やすい時期と原因

乳児湿疹は特に生後1か月から6か月頃にかけて多く見られます。この時期は皮膚の機能がまだ未熟なため、皮脂分泌の影響や外部の刺激を受けやすく、湿疹が出やすい状態になります。


乳児湿疹の主な原因

  • 皮脂の分泌過多
    生後すぐから数か月間は、赤ちゃんの体内に残った母体からのホルモンの影響で皮脂の分泌が活発になります。この皮脂が毛穴に詰まることで炎症を引き起こし、湿疹の原因となります。
  • 皮膚の未発達
    赤ちゃんの皮膚は大人の半分ほどの厚さしかなく、バリア機能が未熟です。そのため、外部の刺激(汗、乾燥、ホコリ、洗剤など)に敏感に反応してしまいます。
  • 汗や汚れの影響
    赤ちゃんは体温が高く汗をかきやすいため、汗や皮脂が皮膚に残ると炎症が起こりやすくなります。また、ミルクやよだれ、食べ物の汚れも湿疹の原因になります。
  • アレルギー反応
    食物アレルギーやハウスダスト、花粉などのアレルゲンが原因で湿疹が現れることもあります。赤ちゃんの体質や環境により症状が左右されることが多いです。

乳児湿疹の主な症状と種類

乳児湿疹は一口に湿疹といっても、その種類や症状にはさまざまなタイプがあります。それぞれの特徴について詳しく解説します。


新生児ニキビ(新生児挫創)

  • 時期
    生後2週間〜3か月頃
  • 症状
    頭や顔、特におでこや鼻周りに赤いブツブツや白いニキビのような湿疹が現れます。皮脂が毛穴に詰まることが原因で、脂っぽい皮膚に見えることがあります。
  • 特徴
    痛みやかゆみは少なく、見た目だけの問題が多いです。

乳児脂漏性湿疹

  • 時期
    生後1か月〜6か月頃
  • 症状
    頭皮や額、耳の周りに黄色いかさぶたのようなものができ、皮脂でベタついた湿疹が見られます。
  • 特徴
    皮脂の分泌が多いために起こる湿疹で、かさぶたを無理に剥がすと悪化することがあるため注意が必要です。

あせも(汗疹)

  • 時期
    汗をかきやすい夏場に多い
  • 症状
    首やわきの下、肘の内側などに小さな赤いブツブツが現れます。汗が皮膚の下にたまって炎症を起こすことが原因です。
  • 特徴
    かゆみを伴うことが多く、汗をかいたまま放置すると悪化します。

乾燥性湿疹

  • 時期
    秋から冬にかけて乾燥しやすい時期
  • 症状
    肌がカサカサし、白っぽく粉を吹いたような状態になります。ひどくなるとひび割れやかゆみを伴います。
  • 特徴
    皮膚のバリア機能が低下しているため、乾燥しやすい赤ちゃんに多く見られます。

アトピー性皮膚炎の可能性

乳児湿疹が長引き、かゆみやジュクジュクとした状態が続く場合はアトピー性皮膚炎が疑われます。アトピー性皮膚炎は遺伝やアレルギー反応が関係していることが多く、医師の診察と適切な治療が必要です。

乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違い

乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は症状が似ているため、見分けがつきにくいことがあります。しかし、いくつかのポイントに注目すると違いが見えてきます。

出現時期

  • 乳児湿疹
    生後数週間から数か月にかけて発症し、成長とともに自然に治まることが多いです。
  • アトピー性皮膚
    生後2か月以降に発症し、症状が長引きやすい特徴があります。

症状の経過

  • 乳児湿疹:
    比較的軽度で、かゆみも少なく、スキンケアで改善することが多いです。
  • アトピー性皮膚炎
    強いかゆみが続き、湿疹がジュクジュクしたり、皮膚が厚くなったりすることがあります。

家族歴や体質

アトピー性皮膚炎は、アレルギー体質の家族歴がある場合に発症しやすい傾向があります。湿疹が長引く場合は、アレルギー検査などを行うことがあります。

乳児湿疹の対処法と家庭でできるケア

乳児湿疹は適切なケアを行うことで症状の改善が期待できます。特に赤ちゃんの肌はデリケートなため、日常的なスキンケアや清潔を保つ工夫が重要です。

皮膚を清潔に保つ

赤ちゃんの皮膚は皮脂分泌が多く、汗や汚れが残ると湿疹が悪化しやすくなります。以下のポイントに気をつけて、皮膚を清潔に保ちましょう。

  • 沐浴・入浴
    毎日1回、ぬるま湯(37〜38℃)で赤ちゃんの体を洗います。石けんは低刺激のものを使用し、泡立てて手のひらで優しく洗いましょう。
  • すすぎ
    石けんが皮膚に残らないよう、しっかりとすすぎます。残った石けんが刺激になることがあります。
  • 汗のケア
    汗をかいたら、こまめにガーゼやタオルで軽く拭き取り、必要に応じて着替えさせましょう。

保湿ケアを徹底する

乳児湿疹のケアで最も大切なのは保湿です。皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を高めることで湿疹の悪化を防ぎます。

  • 保湿剤の選び方
    医師の指導に従い、赤ちゃんの肌に合った保湿剤(クリームやローション)を選びましょう。
  • 塗るタイミング
    入浴後5分以内に保湿剤をたっぷりと塗ります。乾燥しやすい部分には重ね塗りをしましょう。
  • 継続的なケア
    症状が改善しても、保湿ケアは毎日続けることが大切です。

服や寝具の工夫

赤ちゃんの肌に触れる衣類や寝具は、できるだけ肌に優しい素材を選びましょう。

  • 衣類
    綿100%の衣類を選び、化学繊維やウールは避けます。
  • 洗濯
    洗剤は無香料・低刺激のものを使い、すすぎをしっかり行います。柔軟剤も避ける方が安心です。
  • 寝具
    シーツや枕カバーは清潔に保ち、こまめに洗濯しましょう。

掻きむしりの防止

湿疹がかゆいと、赤ちゃんは無意識に掻きむしってしまうことがあります。掻くことで皮膚が傷つき、症状が悪化するため注意が必要です。

  • 爪を短く切る
    赤ちゃんの爪は定期的に短く切り、引っかき傷を防ぎます。
  • 手袋をつける
    かゆみがひどい場合は、柔らかい布製の手袋をつけるのも有効です。

乳児湿疹に適した保湿剤と薬の選び方

乳児湿疹の治療やケアでは、症状の程度に応じて保湿剤や薬を使い分けます。

保湿剤の種類と選び方

保湿剤にはさまざまな種類があり、肌の状態に合わせて使い分けることが大切です。

  • ローション
    水分が多く、さっぱりとした使用感。軽い乾燥に適しています。
  • クリーム
    適度な油分が含まれており、しっとりと保湿します。日常的なケアに最適です。
  • 軟膏
    油分が多く、乾燥がひどい場合や冬場の乾燥対策に適しています。

医師が処方する薬

  • ステロイド外用薬
    強い炎症を抑えるために使用します。医師の指示に従い、適切な量と期間を守って使いましょう。
  • 非ステロイド系外用薬
    軽度の湿疹に用いられます。
  • 抗ヒスタミン薬
    かゆみを和らげるための内服薬です。

食事や母乳が乳児湿疹に与える影響

赤ちゃんの乳児湿疹の原因として、食事や母乳が関係しているのではないかと心配する保護者も多いですが、すべての乳児湿疹が食物アレルギーによるものとは限りません。生後数か月の乳児湿疹は、多くの場合、皮脂分泌や皮膚のバリア機能の未熟さが原因です。しかし、症状が長引く場合や特定の食品摂取後に悪化する場合は、食物アレルギーの可能性も考えられます。

母乳と食事の関係

母乳は赤ちゃんにとって栄養の宝庫であり、母親の食べたものが母乳を通じて赤ちゃんの体に影響を与えることは稀です。ただし、母親の食事内容に過剰なアレルゲン(卵や乳製品など)が含まれている場合、アレルギー体質の赤ちゃんでは稀に湿疹が悪化することがあります。

  • 食事管理
    もし湿疹が食物アレルギーの影響と考えられる場合、医師の指導のもとで除去食を行うことがあります。ただし、自己判断で食事制限をするのは避けましょう。栄養バランスが崩れることで、母乳の質や母親の健康に影響することもあります。

離乳食と乳児湿疹

離乳食の開始時期(生後5〜6か月頃)には、食物アレルギーに注意しながら少しずつ進めることが大切です。

  • 初めての食材
    離乳食では、アレルギーを起こしやすい食材(卵、乳製品、小麦など)を少量ずつ与え、体調や皮膚の状態を観察します。
  • 悪化した場合
    食後に湿疹が悪化する場合は、その食材がアレルゲンである可能性があります。すぐに医師に相談し、アレルギー検査を検討しましょう。

食物アレルギーの見極め

乳児湿疹と食物アレルギーは区別が難しいため、症状が続く場合や湿疹が悪化する場合は、専門医によるアレルギー検査が必要です。血液検査や皮膚テストで原因を特定し、適切な治療や除去食の指導を受けることが重要です。

乳児湿疹が続く場合の注意点と合併症

ほとんどの乳児湿疹は、適切なケアを続けることで改善します。しかし、症状が長引く場合や悪化する場合は、別の疾患や合併症が隠れていることもあります。

アトピー性皮膚炎の可能性

乳児湿疹が数か月以上続き、かゆみや湿疹の範囲が広がる場合、アトピー性皮膚炎が疑われます。アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下とアレルギー反応が原因で発症し、慢性的に湿疹が続きます。

  • 特徴
    かゆみが強く、湿疹が首やひじの内側、膝の裏などに現れることが多いです。

細菌感染やとびひ

赤ちゃんがかゆみで湿疹を掻きむしると、皮膚に傷がつき、そこから細菌感染を起こすことがあります。特に「とびひ(伝染性膿痂疹)」は、湿疹がジュクジュクするのが特徴です。

  • 注意点
    とびひが疑われる場合は、すぐに医療機関を受診し、抗菌薬による治療が必要です。

乳児湿疹と似た皮膚疾患

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  • 脂漏性湿疹
    頭皮や顔に多く、皮脂の分泌が多いために起こる湿疹です。
  • あせも
    汗腺が未発達なため、汗が皮膚にたまって炎症を引き起こします。
  • 接触性皮膚炎
    洗剤や衣類、化学物質による刺激が原因で湿疹が現れることがあります。

乳児湿疹で受診すべきタイミング

軽度の乳児湿疹は家庭でのスキンケアで改善することが多いですが、次のような症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

  • 湿疹が長引く
    2週間以上経っても湿疹が改善しない場合、アトピー性皮膚炎や他の皮膚疾患が隠れている可能性があります。
  • かゆみが強い
    赤ちゃんが頻繁に掻きむしり、夜眠れないほどかゆがる場合は、かゆみを抑える薬の処方が必要です。
  • 湿疹がジュクジュクしている
    湿疹がジュクジュクし、黄色い液体が出ている場合は、細菌感染が疑われます。
  • 全身に湿疹が広がる
    湿疹が顔だけでなく体全体に広がる場合は、早めに受診し原因を特定しましょう。
  • 発熱や機嫌の悪化
    湿疹に加えて発熱や機嫌の悪さが続く場合は、感染症やアレルギー反応の可能性も考えられますので、すぐに医療機関を受診しましょう。

岩間こどもクリニックのロタウイルス予防接種サポート

岩間こどもクリニックでは、乳児湿疹の診療と適切なケアを行っています。赤ちゃんのデリケートな肌を守り、症状改善をサポートいたします。

丁寧な診察と原因の特定

症状の経過や湿疹の状態を丁寧に観察し、必要に応じてアレルギー検査を行います。原因を明確にすることで、的確な治療を行います。

薬の処方とスキンケア指導

症状に合わせて、保湿剤や必要に応じた外用薬(ステロイドなど)を処方します。また、家庭での入浴方法や保湿ケアについても丁寧に指導いたします。

再発防止のアドバイス

再発を防ぐために、衣類や寝具の選び方、食事管理、環境整備について具体的なアドバイスを行います。

赤ちゃんの乳児湿疹は早めのケアが大切です。気になる症状や不安な点があれば、岩間こどもクリニックへお気軽にご相談ください。

まとめ

乳児湿疹は、赤ちゃんの成長過程で多く見られる皮膚トラブルですが、適切なケアで改善することがほとんどです。

  • 主な原因
    皮脂の分泌過多、皮膚の未発達、外部刺激
  • 対処法清潔を保つ、保湿ケアを徹底する、掻きむしりを防ぐ
  • 注意点
    長引く場合や悪化する場合は早めに医療機関を受診

岩間こどもクリニックでは、赤ちゃんの肌トラブルを丁寧に診療し、保護者の皆様と一緒に症状の改善に取り組みます。気になる症状がある際は、お気軽にご相談ください。

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