母乳やミルクを飲まない、吐く

breast milk

母乳やミルクを飲まない、吐く原因は?子どもの疾患と対処法を小児科医が詳しく解説

赤ちゃんが母乳やミルクを飲まない・吐く理由

赤ちゃんが急に母乳やミルクを飲まなくなったり、頻繁に吐いてしまう場合、さまざまな原因が考えられます。一時的な体調不良の場合もありますが、腸や食道、胃など消化管の疾患が原因であることも多いため、保護者が注意深く観察し、早めの対処が重要です。

赤ちゃんが母乳やミルクを飲まない・吐く際の注意点

赤ちゃんに嘔吐や拒食が見られた場合、次のようなポイントに注意しましょう。


  • 嘔吐の頻度、嘔吐物の色や量を確認し記録する。
  • 尿量が減少していないか、脱水の兆候がないか注意深く観察する。
  • ぐったりした様子や発熱、腹痛の有無をチェックする。

家庭での適切な対処法

家庭でできる基本的な対処法は以下の通りです。


  • 無理に飲ませず、少量ずつ頻回に水分を与える。
  • 嘔吐後は赤ちゃんを横向きに寝かせ、吐物の誤嚥を防ぐ。
  • 衣服やおむつを緩め、リラックスできる環境を整える。
  • 嘔吐が続いたり、ぐったりする場合は速やかに医療機関を受診する。

母乳やミルクを飲まない・吐く症状を伴う代表的な疾患と特徴

  • 腸重積の特徴と原因
    腸重積は、腸管が腸管内に入り込んで重なり合い、血流障害を起こす疾患です。生後6か月~2歳頃の乳幼児に多く、突然激しい腹痛を伴って泣き、間欠的な嘔吐や血便(いちごゼリー状)が特徴です。迅速な治療が必要で、超音波検査で診断し、空気や造影剤による整復術が行われます。放置すると腸管壊死の恐れがあるため早急な受診が必須です。
  • 肥厚性幽門狭窄症の特徴と原因
    肥厚性幽門狭窄症は胃の出口である幽門部の筋肉が厚くなり、ミルクが十二指腸に流れにくくなる疾患で、生後1か月前後の赤ちゃんに多く見られます。症状は噴水状の激しい嘔吐で、吐いた後にまた空腹を訴えることが特徴です。体重が増えず、脱水症状が進行するため、超音波検査などで早期診断を行い、外科手術で治療します。
  • アカラシアの特徴と原因
    アカラシアは食道と胃の間の筋肉(下部食道括約筋)が十分に緩まなくなり、食べ物や飲み物が胃に流れない疾患です。赤ちゃんが飲み込みにくそうにしたり、飲んだ直後に吐き戻したり、体重増加不良が見られます。内視鏡検査や食道造影検査で診断を行い、薬物療法や手術で治療します。
  • 胃腸炎の特徴と原因
    胃腸炎はウイルスや細菌の感染により胃腸が炎症を起こす病気です。嘔吐、下痢、腹痛、発熱があり、赤ちゃんの場合は母乳やミルクを飲まなくなり、脱水が進みやすく注意が必要です。水分補給が治療の基本となりますが、症状が強い場合は速やかに受診が必要です。

病院を受診する目安と救急車を呼ぶべきケース

以下の場合には早急に医療機関を受診してください。


  • 病院受診の目安
    ・嘔吐が繰り返し続き、水分が摂れない場合
    ・元気がなく、ぐったりしている場合
    ・血便や異常な色の嘔吐物(緑色、血液混じり)がある場合
  • 救急車を呼ぶべきケース
    ・激しい腹痛があり、泣き止まない場合(腸重積の疑い)
    ・意識がもうろうとし、反応が鈍い場合
    ・呼吸困難や著しい脱水症状がみられ、緊急性が高い場合

症状が落ち着いた後の家庭でのケアと過ごし方

症状が改善した後は、少量ずつ頻回に水分やミルクを与え、無理をせず徐々に通常の食事量に戻しましょう。疲れがたまらないように十分休息を取り、赤ちゃんの回復を促しましょう。医師からの「通院終了」の指示が出るまで、通院は続けましょう。

再発を防ぐための日常生活の注意点

再発予防には以下のポイントを心がけましょう。


  • 日頃から衛生環境を整え、感染予防を徹底する。
  • 定期的な健診で成長や体重の変化を確認する。
  • 異常を感じたら、早めに小児科医に相談する習慣をつける。

よくある質問

肥厚性幽門狭窄症は手術以外の治療法はありますか?
一般的には外科手術が必要ですが、軽度の場合は内科的な管理を試みることもあります。
腸重積の症状はすぐに分かりますか?
激しい腹痛や繰り返す嘔吐、血便が特徴ですが、初期は不明瞭な場合もあり注意が必要です。
アカラシアは赤ちゃんでも起こりますか??
まれですが乳児期でも発症することがあります。飲み込み悪い場合は小児科医の診察が必要です。
胃腸炎の時、母乳やミルクは与え続けてよいですか?
嘔吐が激しい場合は一旦休み、少量ずつ再開するようにします。
吐いた後すぐに水分を与えてもよいですか?
しばらく様子を見て、15~30分ほど落ち着いた後、少量ずつ再開しましょう。
肥厚性幽門狭窄症は再発しますか?
手術後に再発することは稀で、通常は良好な経過をたどります。
胃腸炎の感染予防で重要なことは?
手洗いやおむつ交換後の消毒、感染者との接触を避けることが重要です。
腸重積になりやすい年齢は?
主に生後6か月~2歳までの乳幼児が多く発症します。

まとめ

赤ちゃんが母乳やミルクを飲まなかったり頻繁に嘔吐したりする場合、一見すると日常的な症状にも感じられますが、腸重積や肥厚性幽門狭窄症、アカラシア、胃腸炎などの重大な疾患が背景に隠れている可能性があります。これらの疾患は適切な診断や治療が遅れると症状が急速に悪化し、深刻な合併症や生命に関わる状態に至ることもあるため、保護者の早期発見と迅速な対応が非常に重要です。

特に腸重積は迅速な診断と治療が必須で、放置すると脱水症状や腸管の損傷、さらには手術が必要になる場合もあります。肥厚性幽門狭窄症、アカラシアや胃腸炎も放置すると栄養不足や脱水が進み、赤ちゃんの発育や健康に大きな影響を及ぼします。

岩間こどもクリニックでは、症状の特徴を的確にとらえ、それぞれの疾患に応じた迅速で適切な診断・治療を行います。症状が落ち着いた後も、再発を防ぐための家庭での対処方法や予防策について丁寧にアドバイスし、ご家族が安心して対応できるようサポートを行っています。

赤ちゃんの小さな変化や症状を見逃さず、早めに医療機関を受診することが、お子さまの健康と命を守ることにつながります。少しでも心配な症状がありましたら、岩間こどもクリニックへご相談ください。お子さまとご家族が安心して笑顔で過ごせるよう、私たちが全力でサポートいたします。

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