ヘルパンギーナ

Herpangina

ヘルパンギーナとは?症状・感染経路・治療法と家庭でのケアポイントを解説 - 岩間こどもクリニック(小児科・アレルギー科)

ヘルパンギーナとは

ヘルパンギーナは、夏風邪の一種で、主に乳幼児を中心に発症するウイルス性の感染症です。毎年、夏(6月~8月)に流行する傾向があり、特に0歳から5歳の小さな子どもたちに多く見られます。高熱と喉の奥に水疱(すいほう)や口内炎が現れるのが特徴で、痛みを伴うことが多いため、飲食が困難になることもあります。

ヘルパンギーナは、手足口病や咽頭結膜熱(プール熱)と並び、子どもの三大夏風邪のひとつとして知られています。大人が感染することは少ないですが、免疫が低下している場合や、家庭内での接触が多い場合には大人にも感染することがあります。

ヘルパンギーナの原因ウイルスと感染経路

ヘルパンギーナの原因は、コクサッキーウイルスをはじめとするエンテロウイルス属のウイルスです。複数の型が存在し、一度感染しても異なる型のウイルスに感染することがあるため、再び発症する可能性もあります。

感染経路

ヘルパンギーナは、以下のような経路で感染します。

  • 飛沫感染
    感染者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散った唾液やウイルスを含む飛沫を吸い込むことで感染します。
  • 接触感染
    感染者の唾液や鼻水、便に含まれるウイルスが、手指やおもちゃ、タオルなどを介して口や鼻に入ることで感染します。
  • 糞口感染
    プールの水が十分に消毒されていない場合、感染者のウイルスが水を介して他の人に感染することがあります。

ヘルパンギーナは非常に感染力が強く、特に集団生活を送る保育園や幼稚園では感染が広がりやすいため注意が必要です。

ヘルパンギーナの主な症状と経過

ヘルパンギーナの症状は、感染してから約2~5日間の潜伏期間を経て現れます。主な症状とその経過は以下の通りです。

  • 高熱
    ヘルパンギーナでは、突然38℃〜40℃の高熱が出ることが特徴です。発熱は通常1~3日続き、熱が下がると徐々に回復へ向かいます。
  • 喉の痛みと水疱
    高熱が出ると同時に、喉の奥(口蓋垂や扁桃の周囲)に小さな水疱や口内炎が現れます。水疱は破れると痛みを伴い、飲み物や食べ物を飲み込むのが辛くなることがあります。
  • 食欲不振
    喉の痛みが強いため、食事や水分摂取が困難になることがよくあります。特に乳幼児の場合、脱水症状に注意が必要です。
  • 全身の倦怠感
    発熱や喉の痛みにより、子どもは元気がなくなり、ぐったりすることが多くなります。

症状の経過

  • 発症1日目
    高熱が出始め、機嫌が悪くなることが多いです。
  • 発症2~3日目
    喉の痛みや水疱が悪化し、食欲不振が目立ちます。
  • 発症4日目以降
    熱が下がり、喉の痛みが徐々に軽減されます。
  • 回復期
    水疱が治り、1週間ほどでほとんどの症状が改善します。

ヘルパンギーナの潜伏期間と感染力が強い時期

           

ヘルパンギーナの潜伏期間は、感染から2~5日程度です。感染してすぐに症状が現れるわけではなく、この潜伏期間中にもウイルスを排出しているため、気づかないうちに周囲に感染を広げてしまうことがあります。

感染力が強い時期

           

発症前後から熱が下がるまでの期間が最も感染力が強いとされています。
特に高熱や喉の水疱が出ている時期は、唾液や鼻水を介してウイルスが拡散しやすくなります。
また、症状が治まった後でも、便には1週間から数週間にわたりウイルスが排出され続けるため、トイレ後の手洗いやオムツ交換時の注意が必要です。

ヘルパンギーナの診断方法と医療機関での対応

           

ヘルパンギーナの診断は、特別な検査はせず、その症状で診断が行われます。医療機関では、以下の手順で診断が進められます。

1. 問診と症状の確認

医師は、子どもの体調や症状、発症時期について尋ねます。以下の点が診断のポイントとなります。

  • 突然の高熱(38〜40℃)が出たこと
  • 喉の痛みや飲み込みづらさがあること
  • 喉の奥に水疱や赤みが見られること

2. 喉の視診

           

医師が口の中を観察し、喉の奥や口蓋垂周囲に小さな水疱があるかを確認します。この水疱はヘルパンギーナの特徴的な症状であり、他の病気との区別に役立ちます。

3. 合併症の確認

           

ヘルパンギーナ自体は自然に治癒する病気ですが、まれに脱水症状や脳炎を引き起こすことがあります。高熱が続く場合や、意識がぼんやりしている、けいれんが見られるといった異変がある場合は、追加の検査(血液検査や尿検査など)を行うこともあります。

ヘルパンギーナの治療法と家庭でのケア方法

           

ヘルパンギーナには特効薬が存在しないため、治療は症状を和らげる対症療法が中心となります。自然治癒が期待される病気ですが、家庭でのケアが重要になります。

1. 解熱剤の使用

高熱が続く場合、医師の指示に従って解熱剤(アセトアミノフェンなど)を使用します。ただし、子どもにアスピリン系の解熱剤は禁忌であり、使用しないよう注意が必要です。

2. 水分補給

喉の痛みが強いため、水分を摂りづらくなることがありますので、脱水症状を防ぐためにこまめに水分を摂ることが重要です。

3. 食事の工夫

食事は喉に刺激の少ないものを選びましょう。辛い、酸っぱい、熱いものは避け、少しずつ食べられるものを工夫してください。

4. 室内環境の調整

喉の痛みを和らげるために、部屋の湿度を保つようにしましょう。加湿器を使うか、濡れタオルを部屋に干すことで湿度を高めることができます。

5. 安静に過ごす

発熱や倦怠感がある間は無理に動かさず、しっかりと休養を取ることが大切です。

ヘルパンギーナが重症化した場合の合併症と注意点

ヘルパンギーナは基本的に軽症で自然に回復する病気ですが、まれに合併症を引き起こすことがあります。特に、乳幼児や免疫力が低下しているお子さまは注意が必要です。

主な合併症

  • 脱水症状
    喉の痛みや高熱により水分摂取が難しくなることで脱水症が起こります。
  • 熱性けいれん
    高熱のため、熱性けいれんを引き起こすことがあります。けいれんが見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
  • 無菌性髄膜炎
    エンテロウイルスは髄膜炎を引き起こすことがあります。頭痛、嘔吐、首の痛み、発熱が続く場合は注意が必要です。
  • 脳炎・心筋炎
    まれにウイルスが脳や心臓に影響を及ぼし、脳炎や心筋炎を引き起こすことがあります。ぐったりしている状態が続く、意識がもうろうとしている、呼吸が苦しそうな場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

注意すべき症状

以下の症状が見られた場合は重症化の可能性があるため、早急に受診する必要があります。

  • 高熱が3日以上続く
  • 意識がもうろうとしている
  • 水分が摂れず、脱水症状が見られる
  • けいれんが起こった
  • 嘔吐や頭痛が続く

ヘルパンギーナの流行時期と感染予防のポイント

ヘルパンギーナは、毎年夏(6月から8月)に流行します。主に高温多湿の環境でウイルスが活発になるため、集団生活をする保育園や幼稚園で感染が拡大しやすくなります。

感染を防ぐためには、まず日常生活の中での衛生管理が重要です。ウイルスは唾液や便を通じて広がるため、手洗いを徹底することが最も効果的な予防策となります。外出後やトイレの後、食事の前には石けんを使ってしっかりと手を洗いましょう。また、乳幼児の場合、保護者がオムツ交換後に手洗いを徹底することも大切です。

プールや水遊びが増える夏場は、感染リスクが高まるため注意が必要です。プール後は必ずシャワーで体を清潔にし、目を洗うなどして感染を防ぎましょう。さらに、部屋の換気を定期的に行い、ウイルスの拡散を防ぐことも感染予防に役立ちます。

家庭内で感染者が出た場合は、タオルや食器の共有を避け、唾液や鼻水が付着したおもちゃやドアノブは消毒するようにしましょう。特に小さな子どもは口に手を触れることが多いため、周囲の物の清潔を保つことが感染拡大防止のポイントです。

ヘルパンギーナと手足口病の違いとは

ヘルパンギーナと手足口病は、どちらもエンテロウイルス属のウイルスが原因で引き起こされ、夏場に流行することから混同されがちです。しかし、両者には症状や特徴に明確な違いがあります。

ヘルパンギーナでは、突然の高熱と喉の奥にできる水疱が特徴的です。発熱は1〜3日程度続きます。水疱は主に喉の奥に限られ、手足などには現れません。一方、手足口病は、比較的軽い発熱とともに、手のひらや足の裏、口の中に小さな水疱が広がるのが特徴です。

また、ヘルパンギーナでは高熱が先に現れ、食欲不振やぐったりする症状が目立つのに対し、手足口病では発疹が目立ち、発熱はそれほど高くないことが多いです。

症状の違いを把握することで、適切な対処が可能になりますが、どちらの病気も特効薬はなく、対症療法が中心となるため、早めに医療機関で診断を受けることが大切です。

ヘルパンギーナにかかったときの食事と水分補給の工夫

ヘルパンギーナにかかると喉に強い痛みを伴うため、子どもは食事や水分を嫌がることがよくあります。しかし、栄養補給と水分摂取は回復を助けるために欠かせません。

まず、水分補給では冷たい飲み物が喉の痛みを和らげやすいため、経口補水液やイオン飲料、冷たいお茶などを少しずつ飲ませることが効果的です。飲み込みにくい場合は、冷やしたゼリー飲料も有効です。

食事については、刺激の少ない食べ物を選ぶことが大切です。おかゆや柔らかく煮たうどん、スープ、すりおろしりんごなどは、喉を刺激せず栄養を補給できます。また、冷たいものが食べやすい場合は、プリンやアイスクリーム、ヨーグルトなどもおすすめです。

逆に、辛い食べ物や熱すぎる食事、柑橘類などの酸っぱい食べ物は喉の痛みを悪化させることがあるため避けましょう。子どもが少しでも食べられるよう、無理せず体調に合わせて柔軟に工夫することが大切です。

ヘルパンギーナと似た症状を持つ病気の見分け方

ヘルパンギーナは、発熱や喉の痛みが特徴ですが、同じような症状を示す他の病気と区別する必要があります。主な類似疾患とその違いについて解説します。

  • 手足口病
    手足口病とヘルパンギーナは、どちらもエンテロウイルスが原因ですが、症状の現れ方が異なります。手足口病では、口の中だけでなく手のひらや足の裏、お尻などにも小さな発疹や水疱が現れるのが特徴です。一方、ヘルパンギーナは喉の奥に限定して水疱が現れ、手足には発疹が出ません。
  • 咽頭炎・扁桃炎
    咽頭炎や扁桃炎も喉の痛みや発熱を伴いますが、ヘルパンギーナとは異なり、喉の奥に水疱が現れることは少なく、代わりに扁桃腺が赤く腫れ、膿が付着することがあります。細菌感染が原因であれば抗生物質の治療が有効です。
  • インフルエンザ
    インフルエンザは、急な高熱や倦怠感、筋肉痛が特徴的です。ヘルパンギーナと同様に発熱が起こりますが、インフルエンザでは喉の水疱は現れません。さらに、関節の痛みや強いだるさが顕著です。

症状が似ているため、自己判断が難しい場合は必ず医療機関を受診し、正確な診断を受けることが大切です。

ヘルパンギーナの登園・登校の目安と注意点

ヘルパンギーナは非常に感染力が強いため、集団生活を行う保育園や学校では感染拡大を防ぐための対応が重要です。登園や登校の目安について理解し、適切なタイミングで復帰するようにしましょう。

登園・登校の目安

学校保健安全法では、ヘルパンギーナは「出席停止」の対象には含まれていません。しかし、発症後に感染力が高まるため、以下の基準を参考に登園・登校を再開することが望ましいとされています。


  • 高熱が下がり、食事や水分が摂れるようになったこと
  • 子どもの体力が回復し、元気が戻っていること

症状が改善した後も、しばらく便中にウイルスが排出されるため、トイレ後の手洗いや衛生管理は引き続き徹底することが必要です。

家庭内での注意点

家庭内で他の家族に感染させないために、以下の点に注意しましょう。


  • タオルや食器を共有しない
  • 感染した子どものおもちゃや触れた場所をアルコール消毒する
  • 保護者がオムツ交換をする際は、手洗いを徹底する

登園・登校を再開する際は、保育園や学校に子どもの体調についてしっかり伝え、周囲に配慮することが大切です。

よくある質問と回答

ヘルパンギーナに関して、保護者の方からよく寄せられる質問とその回答を紹介します。

ヘルパンギーナは大人にも感染しますか?
はい、大人にも感染することがあります。ただし、子どもに比べて発症するケースは少なく、症状が軽いことが多いです。しかし、免疫が低下している場合や子どもとの密接な接触が多い場合には感染のリスクが高まります。
ヘルパンギーナの予防接種はありますか?
残念ながら、ヘルパンギーナを予防するワクチンは現在存在しません。日常的な手洗い、うがい、感染者との接触を避けるなど、基本的な感染予防が最も有効です。
兄弟姉妹が感染した場合、どうすればよいですか?
兄弟姉妹の間で感染が広がりやすいため、タオルや食器を共有しないようにし、手洗いを徹底しましょう。また、家庭内で使うおもちゃや家具などもこまめに消毒すると効果的です。
Q4. ヘルパンギーナにかかった子どもは、再び感染することがありますか?
はい、ヘルパンギーナの原因となるコクサッキーウイルスには複数の型が存在するため、一度感染しても別の型に再び感染する可能性があります。

岩間こどもクリニックの診療サポートと家庭へのアドバイス

岩間こどもクリニックでは、ヘルパンギーナの診療において迅速な診断と適切なケアを提供しています。お子さまの高熱や喉の痛みが続く場合は、早めに受診いただくことで、症状の悪化や合併症を防ぐことができます。

当クリニックのサポート内容

  • 迅速な診察と適切なケア
    症状に応じて迅速な検査を行い、正確な診断を提供します。
  • 家庭でのケア指導食事や水分補給の工夫、発熱時の対応について丁寧にアドバイスいたします。
  • 感染予防のサポート
    ご家庭での感染拡大を防ぐため、手洗いや衛生管理のポイントもお伝えします。

お子さまが元気に回復するまで、保護者の方と一緒にしっかりとサポートいたします。ヘルパンギーナに関するご相談があれば、どうぞお気軽にご来院ください。

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