腸重積症

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腸重積症の基礎知識|原因・症状・治療法から予防策まで徹底解説 - 岩間こどもクリニック(小児科・アレルギー科)

腸重積症とは

腸重積症とは、小腸や大腸の一部が隣接する腸管に入り込んでしまう病気です。この状態により腸管が閉塞し、血流が遮断されることで激しい腹痛や吐き気を引き起こします。放置すると腸が壊死する可能性があり、緊急の治療が必要な病気です。

この病気は乳幼児に多く見られ、特に生後6か月から2歳までの間に発症しやすいとされています。腸重積症は珍しい病気ではなく、一般の外来でも時々見られます。早期に適切な治療を受ければ予後は良好です。

腸重積症の原因と発生メカニズム

腸重積症の正確な原因は明らかではありませんが、多くのケースでウイルス感染や腸の活動の異常が関与していると考えられています。以下が主な要因です。


  • ウイルス感染
    ロタウイルスやアデノウイルスなどの感染によって腸管の活動が過剰になることで、腸の一部が隣接する腸管に巻き込まれることがあります。
  • 腸内のポリープや腫瘍
    まれに、腸内に突出した病気が引き金となる場合があります。
  • 腸の動きの異常
    消化管の運動が不規則になることで、腸管が重なる可能性があります。

この病気は乳幼児に多いですが、まれに大人にも発症することがあります。

腸重積症の主な症状

腸重積症の症状は急激に現れることが特徴です。以下は主な症状です。


  • 激しい腹痛
    発作的に泣き叫ぶほどの痛みがあり、しばらくすると痛みが落ち着き、その後に再度痛みを繰り返すという間欠的な腹痛が特徴です。
  • 嘔吐
    初期段階では胃内容物を吐き、進行すると胆汁を含んだ吐瀉物が見られることがあります。
  • 血便
    腸が閉塞することで腸内の血流が遮断され、ゼリー状の血便(赤い粘液)を排泄することがあります。
  • 触診での腫瘤
    腹部を触るとソーセージ状の腫瘤が確認されることがあります。

これらの症状が見られた場合、すぐに医療機関を受診する必要があります。

腸重積症が疑われる際の診断方法

腸重積症の診断には、問診と身体診察が重要な役割を果たします。医師は以下の方法を用いて診断を行います。


  • 問診
    症状の経過、腹痛の程度、嘔吐や血便の有無について詳しく確認します。
  • 触診
    腹部を触ることで、腸重積による腫瘤があるかを確認します。
  • 画像検査
    超音波検査やX線検査が使用されます。特に、超音波検査では「ターゲットサイン」と呼ばれる腸重積を示す特徴的な画像が確認されます。

診断が確定すれば、速やかに治療が開始されます。

腸重積症が多い年齢とリスク要因

腸重積症は主に生後6か月から2歳の間に多く見られます。この年齢層では、消化管の成熟が未完成であることや、感染症による腸管の反応が過剰になりやすいことが原因とされています。

以下のリスク要因が挙げられます。


  • ウイルス感染
    特にロタウイルスやアデノウイルスがリスクを高めます。
  • 腸管の解剖学的な異常
    ポリープや腫瘍などが原因となることがあります。
  • 家族歴
    腸重積症の既往歴が家族内にある場合、リスクが高まることがあります。

これらのリスク要因を把握しておくことで、早期の発見と対応が可能になります。

腸重積症が引き起こす合併症

腸重積症は、迅速に治療を行わない場合、いくつかの重大な合併症を引き起こす可能性があります。

以下が代表的な合併症です。


  • 腸壊死
    腸管が重なった部分で血流が途絶えると、腸組織が壊死する危険性があります。この場合、壊死した腸管を外科的に切除する必要が生じます。
  • 腸閉塞
    腸が完全に閉じてしまうことで、食物や消化液の流れが止まり、嘔吐や激しい腹痛が続きます。
  • 腹膜炎
    壊死した腸管に穴が開き、腸内容物が腹腔内に漏れ出すことで腹膜炎を引き起こします。この状態は非常に危険で、緊急手術が必要です。

これらの合併症を防ぐためにも、早期の診断と治療が極めて重要です。

腸重積症の治療方法

腸重積症の治療は、非外科的治療と外科的治療の2つに大別されます。


  • 非外科的治療
    主に空気または造影剤を用いた浣腸が行われます。これにより、重なった腸管を元の位置に戻します。成功率は90%近くに達し、多くの場合これで治療が完了します。治療後は1〜数ヶ月程度の入院が必要です。
  • 外科的治療
    非外科的治療で整復出来かなった場合や、腸管の壊死が疑われる場合には外科的治療が必要です。開腹手術で重なった腸管を手動で戻し、必要に応じて壊死した部分を切除します。

開腹手術を行った場合には長期の入院が必要となります。入院中は再発の兆候がないか慎重に観察されます。

腸重積症の発症後の経過と治療後のケア

腸重積症の治療が成功した後は、一定期間の観察が必要です。以下は治療後のケアで重要なポイントです。


  • 再発の兆候を観察
    腸重積症は治療後に再発することがあります。特に治療後数日間は腹痛や血便がないか注意深く観察する必要があります。
  • 食事管理
    回復初期は、腸に負担をかけないよう、消化の良い食事を与えます。少量ずつ始めて徐々に通常の食事に戻しましょう。
  • 定期検診
    医師の指示に従い、定期的に健康状態を確認します。特に再発の可能性が高い場合は、詳細なフォローアップが必要です。

腸重積症の早期発見のポイント

腸重積症の早期発見には、以下のポイントを押さえることが重要です。


  • 腹痛の観察
    子どもが突然泣き出し、体を丸めて痛がる場合は注意が必要です。
  • 嘔吐の有無
    胃内容物だけでなく胆汁が混じる場合、腸閉塞が進行している可能性があります。
  • 血便の確認
    ゼリー状の血便が見られる場合は、腸重積症の可能性が高いです。

これらの兆候が見られたら、すぐに医療機関を受診することが推奨されます。

腸重積症と似た症状を持つ病気との違い

腸重積症と似た症状を持つ病気には以下のものがあります。


  • 腸閉塞
    腸閉塞は腸管内での物理的な詰まりが原因で起こります。腸重積症と異なり、腫瘤が触れない場合が多いです。
  • 虫垂炎
    虫垂炎も激しい腹痛を伴いますが、痛みは右下腹部に限局していることが特徴です。
  • 胃腸炎
    胃腸炎では下痢や嘔吐が主な症状で、血便や触診での腫瘤は通常見られません。

正確な診断には、医療機関での検査が必要です。

腸重積症は再発するのか

腸重積症は治療後に再発する可能性があります。特に非外科的治療を行った場合、再発率は約10%程度とされています。一度再発した場合でも、再び非外科的治療で改善することが多いですが、頻繁に再発する場合には外科的治療が検討されることがあります。

腸重積症の予防は可能か

腸重積症そのものを完全に予防する方法はありませんが、いくつかのリスクを軽減する手段は存在します。

以下のポイントを参考にしてください。


  • 感染症の予防
    ロタウイルスなどの感染が腸重積症の引き金になることが多いため、ロタウイルスワクチンを接種することでリスクを減らすことができます。また、手洗いを徹底し、衛生的な環境を維持することが感染予防に役立ちます。
  • 食事管理
    虫離乳食期の子どもには、腸に負担をかけない消化の良い食事を心掛けることで、腸管の過剰な動きを抑えることができます。
  • 早期の受診
    腸重積症の兆候が見られた際には、すぐに医療機関を受診することで進行を防ぐことができます。

日頃から子どもの体調を注意深く観察することが、予防の第一歩です。

岩間こどもクリニックの腸重積症診療とサポート

岩間こどもクリニックでは、腸重積症の診断と治療に迅速に対応する体制を整えています。

また、治療後のケアや再発防止に向けたアドバイスも充実しており、保護者の不安を解消するための丁寧な説明を行っています。腸重積症が疑われる場合や不安な症状がある場合は、ぜひ岩間こどもクリニックにご相談ください。

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