おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

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おたふくかぜの基礎知識|原因・症状・予防接種まで詳しく解説 - 岩間こどもクリニック(小児科・アレルギー科)

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)とは

おたふくかぜ、正式には流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスというウイルスによって引き起こされる感染症です。特に幼児から小学生の間に多く見られる病気で、耳の下の腺(耳下腺)が腫れ、痛みを伴うのが特徴です。

おたふくかぜは、感染力が比較的強い病気で、症状が出る前から周囲に感染を広げることがあります。しかし、ワクチン接種によって予防が可能な病気でもあり、適切な予防と対応が求められます。

原因ウイルスと感染経路

おたふくかぜの原因となるムンプスウイルスは、主に飛沫感染と接触感染によって広がります。感染者が咳やくしゃみをすると、ウイルスが唾液の飛沫とともに空気中に拡散し、周囲の人がそれを吸い込むことで感染が成立します。また、感染者が触れたものにウイルスが付着し、それを介して口や鼻にウイルスが侵入する接触感染も一般的です。

特に、保育園や幼稚園、小学校など子どもたちが密接に接する環境では感染が広がりやすく、流行が起こることがよくあります。

おたふくかぜの主な症状と発症のサイン

おたふくかぜの初期症状には、軽い発熱やだるさが挙げられます。その後、片側または両側の耳下腺に痛みを伴う腫れが起こります。この腫れが最大になるのは発症から1〜3日後で、通常1週間程度で徐々に引いていきます。

耳下腺以外にも、顎下腺や舌下腺が腫れることがあります。腫れによる痛みのため、食べ物や飲み物を飲み込むのが難しくなることもあります。また、まれに高熱を伴うこともあるため、子どもの体調に注意することが必要です。

おたふくかぜは大人にも感染するのか

おたふくかぜは子どもの病気と思われがちですが、大人にも感染することがあります。特に、子どもの頃に感染しなかった場合やワクチンを接種していない場合、大人でも発症するリスクがあります。

大人が感染すると、子どもよりも症状が重くなることが多く、耳下腺の腫れや痛みに加えて高熱や全身の倦怠感が強く現れる傾向があります。また、大人の男性では睾丸炎、女性では卵巣炎といった合併症が起こるリスクもあります。これらの合併症は不妊の原因になる可能性があるため、大人になってからの感染には注意が必要です。

おたふくかぜの合併症

おたふくかぜそのものは比較的軽症で済みますが、稀に合併症を引き起こすことがあります。代表的な合併症には以下のようなものがあります。


  • 無菌性髄膜炎
    おたふくかぜウイルスが脳や脊髄を覆う膜に感染し、髄膜炎を引き起こすことがあります。頭痛や嘔吐、発熱が症状として現れますが、適切な治療を受ければ多くの場合回復します。
  • 難聴
    非常にまれですが、難聴を引き起こす場合があります。これが後遺症として残るケースもあります。
  • 睾丸炎・卵巣炎
    思春期以降におたふくかぜにかかった場合、男性は睾丸炎、女性は卵巣炎になることがあります。睾丸炎は特に注意が必要で、不妊の原因となることがあります。

これらの合併症を防ぐためにも、予防接種が有効です。

おたふくかぜの診断方法

おたふくかぜの診断は、主に症状と患者の病歴をもとに行われます。耳下腺の腫れや痛みなどの典型的な症状が見られる場合、診断は比較的容易です。また、流行状況や周囲に同様の症状を持つ人がいるかどうかも参考になります。

しかし、症状だけでは判断が難しい場合もあります。例えば、他の感染症による耳下腺の腫れやリンパ節の腫れと見分けがつかない場合があります。その際は、血液検査でウイルス抗体検査を行い、ムンプスウイルスへの感染を確認します。これにより、診断の正確性が向上します。

早期診断は、合併症のリスクを最小限に抑えるためにも重要です。症状が現れたら、速やかに医療機関を受診することが推奨されます。

家庭での対処法

おたふくかぜにかかった場合、家庭での適切なケアが症状の緩和に役立ちます。以下は主な対処法です。


  • 安静を保つ
    体力を回復させるために十分な休息をとりましょう。特に発熱や倦怠感が強い場合は無理をせず、静かな環境で過ごすことが重要です。
  • 水分補給
    発熱や腫れによる痛みで食事が取りづらい場合がありますが、水分補給は欠かせません。スープやゼリー、スポーツドリンクなど、飲みやすいものを用意しましょう。
  • 患部の冷却
    耳下腺や顎下腺の腫れが痛む場合は、冷たいタオルや保冷剤で優しく冷やすことで痛みが和らぐことがあります。ただし、冷やしすぎには注意が必要です。
  • 適切な食事
    柔らかくて噛む負担の少ない食事を用意しましょう。例えば、おかゆやヨーグルト、スムージーなどが適しています。
  • 薬の使用
    痛みや発熱がひどい場合は、医師の指示のもと解熱鎮痛薬を使用することもできます。ただし、自己判断での薬の使用は避けましょう。

症状が重い場合や、合併症が疑われる場合はすぐに医療機関に相談することが必要です。

おたふくかぜの治療法

おたふくかぜには特効薬がなく、主に対症療法が行われます。これは、症状を和らげ、体がウイルスと戦うのを助けるための治療です。例えば、発熱や痛みには解熱鎮痛薬が用いられます。また、腫れによる不快感を軽減するために患部を冷やすことが推奨されます。

ウイルスは自然に体外へ排出されるため、時間が経てば症状は徐々に改善します。しかし、合併症が疑われる場合や症状が重い場合には、医師の判断のもとで専門的な治療が行われることがあります。

おたふくかぜの予防接種

おたふくかぜを予防する最も効果的な方法は、予防接種を受けることです。ムンプスワクチン(おたふくかぜワクチン)は、1歳から接種可能で、定期接種の対象にはなっていないものの、多くの医療機関で任意接種として提供されています。

通常、2回の接種が推奨されており、1回目は1歳前後、2回目は小学校入学前に行います。この2回接種によって、より高い免疫効果が期待できます。

ワクチン接種は、おたふくかぜそのものを防ぐだけでなく、合併症のリスクを大幅に低減することができます。接種に関する詳細は、医療機関で相談することをおすすめします。

流行時期と予防のポイント

おたふくかぜは一年を通じて見られますが、特に春から初夏にかけて流行する傾向があります。この時期には、学校や保育園での集団感染が発生しやすくなります。

予防の基本は、手洗いや咳エチケットの徹底です。また、ワクチン接種が流行を防ぐ最も効果的な方法です。流行期に感染者が増えた場合、家庭内での予防も重要です。家族内で感染を防ぐため、タオルや食器の共有を避けることが推奨されます。

おたふくかぜと似た症状を持つ病気

おたふくかぜと似た症状を持つ病気には、いくつかの感染症や炎症性疾患が含まれます。これらを正確に区別することは、適切な治療を受けるために重要です。


  • 唾液腺炎
    細菌やウイルスによる唾液腺の炎症は、おたふくかぜとよく似た腫れや痛みを引き起こします。ただし、唾液腺炎は抗菌薬が有効な場合も多く、診断が異なります。
  • リンパ節炎
    耳の下や顎の下にあるリンパ節が腫れることがあります。これは感染症に伴うものが一般的ですが、腫れが耳下腺の腫れと区別しづらい場合があります。
  • 扁桃炎
    扁桃腺の炎症は喉の痛みを伴うことが多く、おたふくかぜと誤解される場合があります。ただし、扁桃炎では耳下腺の腫れは通常見られません。

これらの病気を見分けるためには、医療機関での診断が不可欠です。血液検査や問診によって、正確な病名が特定されます。

よくある質問と回答

おたふくかぜの感染力はどのくらいですか?
おたふくかぜは感染力が強く、症状が出る2〜3日前から発症後5日程度までウイルスを周囲に広げる可能性があります。特に家庭内や保育園などの密接な環境で感染が拡大しやすいです。
一度かかると再感染の可能性はありますか?
通常、おたふくかぜにかかった人は生涯にわたる免疫を獲得します。ただし、非常にまれに再感染が報告されることもあります。
ワクチンは何歳まで接種可能ですか?
年齢に制限はありませんが、推奨されるのは1歳から12歳頃までです。大人でも接種可能ですが、費用は自己負担となります。
子どもが感染した場合、家族内での予防策は?
タオルや食器の共有を避け、手洗いや咳エチケットを徹底しましょう。また、家庭内の高リスク者(妊婦や免疫力が低い家族)を守るため、できる限り接触を控えます。

おたふくかぜで登校や登園を控える期間はどれくらい?

おたふくかぜにかかった場合、登校や登園は一定期間控える必要があります。文部科学省の基準では、腫れが現れてから5日を経過し、かつ全身状態が良好になった後に登校・登園が可能とされています。

ただし、症状の回復には個人差があるため、医師の診断を受けて最終的な登校判断を行うことが推奨されます。

おたふくかぜを防ぐための家庭での工夫

おたふくかぜの感染を防ぐためには、日常生活での工夫が重要です。


  • 手洗いの徹底
    石鹸と流水を使った正しい手洗いを習慣化しましょう。特に外出後や食事の前後には欠かせません。
  • タオルや食器の分け合いを避ける
    家庭内での共有物が感染の媒介となることを防ぐため、個別に使用するよう心がけます。
  • おもちゃや家具の消毒
    小さな子どもがよく触れるおもちゃや家具は、定期的に消毒を行い、ウイルスの拡散を防ぎます。
  • 室内環境の清潔を保つ
    定期的な換気と清掃を行い、感染を防ぎやすい環境を整えます。

感染拡大を防ぐ正しい手洗いの方法

手洗いは、最も基本的で効果的なおたふくかぜの予防策です。以下のステップで正しい手洗いを実践しましょう。


  • 流水で手を濡らす
    手全体を十分に濡らします。
  • 石鹸を泡立てる
    手のひら、手の甲、指の間、爪の間をしっかり洗います。
  • 20秒以上洗う
    指先や親指など細かい部分も忘れずに洗いましょう。
  • 流水で洗い流す
    石鹸をしっかり落とし、清潔なタオルで水分を拭き取ります。

この方法を習慣づけることで、感染リスクを大幅に減らすことができます。

おたふくかぜの流行を抑える地域での取り組み

地域全体での取り組みも、おたふくかぜの流行を抑えるために重要です。保育園や学校では、感染拡大を防ぐために以下の対策が取られています。


  • 感染が疑われる場合の早期帰宅指導
  • 保護者への情報提供や注意喚起
  • 感染者が出たクラスや学年の消毒徹底
  • 定期的な手洗いや換気の指導

また、地域の医療機関では予防接種の啓発が行われています。これにより、予防接種率の向上と感染予防の強化が期待されています。

岩間こどもクリニックのおたふくかぜ診療

岩間こどもクリニックでは、おたふくかぜの診断・治療に加え、予防接種の提供を行っています。症状が疑わしい場合や、予防接種について相談したい場合には、小児科専門医が丁寧に対応します。

また、予防接種スケジュールの提案や、家庭での対処法についてのアドバイスも行っています。おたふくかぜに関する疑問や不安がある方は、ぜひ岩間こどもクリニックにお問い合わせください。

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