臍ヘルニア(でべそ)

umbilical hernia

赤ちゃんの臍ヘルニア(でべそ)とは?原因から治療方法、注意点まで徹底解説 - 岩間こどもクリニック(小児科・アレルギー科)

臍ヘルニア(でべそ)とは

臍ヘルニア(さいへるにあ)は、一般的に「でべそ」として知られ、赤ちゃんのおへそがぽっこりと外側に膨らんで見える症状です。
この状態は、赤ちゃんが生まれてから数日経ち、へその緒が取れた後、腹壁がしっかり閉じきらず、お腹の内側から腸などの臓器が圧力で押し出されることによって引き起こされます。
おへその内部が未発達で、十分に閉じきらないことで、赤ちゃんが泣いたりお腹に力を入れるたびに、腹圧によっておへそが膨らんで「でべそ」の状態が強調されます。
触れると柔らかく、指で押すと元に戻ることが多いですが、また腹圧がかかると再び膨らむのが特徴です。

臍ヘルニアの発症頻度と赤ちゃんに多い理由

臍ヘルニアは、生まれたばかりの赤ちゃんに頻繁に見られる症状であり、特に新生児のうち約20%がこの症状を経験すると言われています。
臍ヘルニアが赤ちゃんに多い理由は、成長段階にある赤ちゃんの腹壁がまだ十分に発達していないためです。
腹壁の筋肉や膜が未発達な状態では、おへそが強い力に抵抗できず、腸が膨らみやすくなるのです。
また、特に早産児や低出生体重児では、さらに発達が遅れやすいため、臍ヘルニアの発症リスクが高まる傾向にあります。

臍ヘルニアが自然に治るケースと治療が必要なケース

臍ヘルニアは1歳頃までに自然に治癒することが多いとされています。実際、臍ヘルニアのうち80%以上が成長とともに自然に改善され、通常は特別な治療を必要としません。
しかし、場合によっては自然に治らず、治療が必要なケースもあります。
自然治癒が見込まれない場合や、おへその膨らみが引かない場合は、医師の診察が推奨されます。
特に、腸が元に戻りにくくなる「嵌頓(かんとん)」という状態になると、血流が悪くなり腸がダメージを受ける可能性があるため、早期に医療機関での対応が重要です。

嵌頓(かんとん)とは

嵌頓(かんとん)とは、臍ヘルニアにおいて飛び出した腸が元に戻らず、出口部分で強く締め付けられて血流が悪くなる状態です。
この状態は稀ですが、腸が圧迫されたまま放置されると、腸の組織が壊死するリスクがあります。
嵌頓になると、激しい腹痛や嘔吐が突然発生し、赤ちゃんが苦しむような泣き方をすることが特徴です。
指で押しても腸が戻らない場合、腸が嵌頓している可能性があるため、すぐに医療機関での診察が必要です。
嵌頓が疑われる場合には緊急処置が求められ、早期に治療を受けることで合併症の発生を防ぐことが可能です。

新生児期の臍ヘルニアと腹壁の発達における影響

新生児期に見られる臍ヘルニアは、赤ちゃんの発育と密接に関わっています。
出生直後の赤ちゃんは、腹壁の筋肉が成長の途中であり、十分に厚みを持っていません。
このため、腹圧に対する防御力がまだ弱く、腸が隙間から出やすくなります。
成長とともに腹壁が強化され、臍ヘルニアが自然に改善されるケースもありますが、成長に伴って腹圧が増加することで症状が悪化する可能性もあります。
このため、新生児期には臍ヘルニアの有無や腹壁の発達状況を確認し、適切な経過観察が推奨されます。

臍ヘルニアの治療法

臍ヘルニアの治療方法の中でも、近年注目されているのが「圧迫療法」です。圧迫療法とは、患部に綿球などを当てて軽く圧迫し、おへその膨らみを抑えることで自然治癒を促す方法です。
非侵襲的で痛みを伴わないため、新生児や乳児にも安心して行える治療法として広く利用されています。
当院でもこの圧迫療法を導入しており、短期間での治療効果が確認されています。
圧迫療法を適切に行うことで、臍ヘルニアの自然治癒が早まる可能性が高まるため、医師による指導のもとでの実施が推奨されます。

圧迫療法の効果とメリット

圧迫療法は、臍ヘルニアに対する有効性が臨床研究で確認されており、特に1歳未満の乳児において高い治癒率を示しています。
この療法では、おへその突出を防ぐために綿球をおへそにあてがい、透明な防水フィルムテープで固定することで、腸が飛び出すのを抑えます。
この治療法により、通常2~3か月で臍ヘルニアの改善が見られることが多く、手術などの侵襲的な治療を避けられる可能性が高まります。
また、圧迫療法は、自然治癒よりも治癒が早まる傾向があり、赤ちゃんの負担を軽減できる点で注目されています。

圧迫療法の実施方法(綿球・防水テープの使い方)

圧迫療法を行う際には、医師の指導のもとで清潔な綿球と防水テープを使用します。
まず、清潔な綿球をおへそに軽くあてがい、透明な防水フィルムテープで固定します。
固定した状態でも入浴が可能で、日常生活での支障はほとんどありません。
ただし、テープを貼った部分に湿気や汗が溜まらないようにするため、適宜交換が必要です。
圧迫療法は適切に実施することで高い効果が得られるため、医師の指示を守りながらケアを行いましょう。

臍ヘルニア治療中の入浴や日常ケアの注意点

圧迫療法中のテープは防水仕様であり、入浴時にそのまま水に濡れても問題ありません。
しかし、皮膚の弱い赤ちゃんの場合、テープが長時間貼られていると、肌がかぶれたり赤くなることがあります。
そのため、皮膚の状態をこまめに観察し、異常が見られる場合は医師に相談しましょう。
入浴後はお肌を優しく乾かし、清潔な状態を保つことが大切です。
また、治療中におへそを無理に触らないよう注意し、赤ちゃん自身もいじらないように見守りましょう。

ご家庭で気をつけたい臍ヘルニア治療のセルフケア

ご家庭で臍ヘルニアの治療を行う際には、清潔な環境を整え、必要以上におへそを触らないように気をつけましょう。
特に赤ちゃんはおへそに興味を持ちやすく、触りたがることがありますが、治療効果を維持するためにもなるべく触らせないことが望ましいです。
また、圧迫療法のテープが剥がれた場合は、医師の指導に従い新しいテープを使用してください。
セルフケアはあくまで補助的な役割であるため、定期的な医師の診察を受け、正しい方法で治療を進めることが重要です。

硬貨を使った臍ヘルニア治療法の危険性と注意

古くから「でべそを治すためにおへそに硬貨を貼る」といった民間療法が知られていますが、これは衛生面での問題があり、現代の医療では推奨されていません。
硬貨には雑菌が付着している可能性があり、皮膚への感染リスクが高まります。
また、硬貨を固定する際にテープやゴムを使用することが多いですが、これが原因で皮膚がかぶれたり、赤ちゃんが不快感を感じることがあります。
安全な治療法として、医師の指導のもとで行う圧迫療法を選択することが推奨されます。

臍ヘルニアの症状が悪化する兆候

臍ヘルニアが悪化する兆候としては、おへその腫れや色の変化、赤みが増すことがあります。
通常、臍ヘルニアは触れると柔らかく、押すと元に戻る性質がありますが、腫れが固くなったり、触ると赤ちゃんが痛がったりする場合は、炎症が進んでいる可能性が考えられます。
臍ヘルニアが悪化すると、腹痛や不快感が増し、日常生活にも支障をきたすことがあります。
特に、皮膚の色が紫色に変わった場合は血流が悪化している兆候であり、早期受診が推奨されます。

臍ヘルニア治療開始のタイミング

>臍ヘルニアの治療は、生後3か月以内に開始するのが理想とされています。
この時期に治療を始めると、治癒率が9割以上とされており、自然治癒が期待できます。
早期に圧迫療法を開始することで、臍ヘルニアが長引くリスクを最小限に抑え、より短期間で治療が完了する可能性が高まります。
1歳を過ぎると、自然治癒が難しくなり、治療効果も薄れてしまうため、適切なタイミングで治療を始めることが重要です。

臍ヘルニアが成長に与える影響

臍ヘルニアは成長に伴い自然に改善されるケースが多い一方で、長期間症状が続くと、腸への負担や腹部の成長に影響を与える可能性があります。
そのため、臍ヘルニアが残っている場合は、医師の診察により、現在の状態を把握し、自然治癒が期待できるか、追加の治療が必要かを判断することが大切です。

臍ヘルニアの外科手術

1歳半を過ぎても臍ヘルニアが治癒しない場合や、腸の突出が続く場合は、手術が検討されることがあります。
手術の適応は、臍ヘルニアが自然に治る可能性が低いと判断された場合や、腸の突出が頻繁に発生し、日常生活に支障が出ているケースです。
手術は小さな切開を行い、腸を元に戻し、腹壁をしっかり閉じることで行われます。
当院では手術が必要と判断した場合、連携医療機関をご紹介いたします。

赤ちゃんのおへそに異変を感じた時の対応と医療機関への相談

おへその膨らみが気になる場合や、赤ちゃんが腹痛を訴えるような兆候が見られる場合は、速やかに医療機関で相談することが重要です。
臍ヘルニアは軽度であれば自然に治癒することが多いですが、症状が重くなると嵌頓などのリスクも考えられるため、早めの受診が推奨されます。
また、治療方針についても医師とよく相談し、ご家族が安心して治療を進められるようサポートを受けましょう。
臍ヘルニアに関する疑問や不安があれば、お気軽に医療機関でご相談ください。

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