嘔吐

vomiting

嘔吐とは?子どもに多い原因と疾患・適切な対処法を小児科医が詳しく解説

嘔吐とは?子どもに多く見られる理由

嘔吐とは胃の内容物を口から吐き出す症状のことで、子どもでは比較的頻繁に見られます。子どもは消化器や嘔吐反射の調節が未熟で、少しの刺激や疾患によっても嘔吐を起こしやすい傾向があります。また、疾患の初期症状として嘔吐が現れることも多いため、注意深く観察する必要があります。

子どもが嘔吐した際の注意点

子どもが嘔吐した場合は以下の点に注意してください。


  • 嘔吐物を誤嚥しないよう、顔を横向きに寝かせる。
  • 一度に大量の水分を与えず、少量ずつ頻回に補給する。
  • 嘔吐以外に腹痛、発熱、意識の変化などの症状がないかをよく観察する。

子どもが嘔吐した際の家庭での対処法

家庭でできる基本的な対処法は以下の通りです。


  • まずは横向きに寝かせ、気道を確保して誤嚥を防ぐ。
  • 嘔吐が止まったら少量の水分をゆっくり与える(経口補水液が適切)。
  • 食事は嘔吐が落ち着いてから少しずつ再開し、刺激が少なく消化の良いものを選ぶ。
  • 衣服や寝具は速やかに清潔なものに交換し、感染予防に努める。

嘔吐を起こす代表的な疾患

  • 感染性胃腸炎の特徴と原因
    感染性胃腸炎はウイルス(ノロウイルスやロタウイルス)や細菌感染によって起こります。症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱で、特に嘔吐が突然始まり激しいことが特徴です。感染力が強く、家庭内や集団生活での流行に注意が必要です。十分な水分補給で脱水症状を防ぎますが、嘔吐が頻回の場合は早めに医療機関を受診しましょう。
  • ケトン血性嘔吐症の特徴と原因
    ケトン血性嘔吐症は小児に特有の疾患で、空腹やストレス、感染症などが引き金となり、繰り返し嘔吐を起こします。吐き気や嘔吐が激しく、胃に何も残っていないのに繰り返し吐き続けることが特徴です。尿中にケトン体が出ることが診断の手がかりとなります。ブドウ糖の摂取(甘い飲み物)や点滴治療で症状は改善しますが、頻繁に繰り返す場合は専門的な管理が必要です。
  • 腸重積症の特徴と原因
    腸重積症は腸の一部が別の腸に入り込んでしまい、血流障害を起こす疾患です。生後3ヶ月〜2歳頃に多く見られ、突然の激しい腹痛と嘔吐を繰り返し、いちごゼリー状の血便が特徴的です。早急な治療が必要な緊急性の高い病気であり、腸重積症が疑われる場合は速やかに医療機関を受診し、適切な処置を受けることが必要です。

病院を受診する目安と救急車を呼ぶべきケース

以下の場合には早めに病院を受診してください。


  • 病院受診の目安
    ・嘔吐が5回以上続く場合や水分摂取が困難な場合
    ・血液を含む嘔吐物が見られる場合
    ・発熱や強い腹痛を伴う場合
    ・顔色が悪く元気がない
  • 救急車を呼ぶべきケース
    ・意識がもうろうとし、呼びかけに反応がない場合
    ・呼吸が苦しそうで顔色が青白い(チアノーゼ)場合
    ・激しい腹痛や血便を伴い、症状が急速に悪化している場合

嘔吐後の家庭でのケアと過ごし方

嘔吐が止まった後も胃腸は敏感なため、無理な飲食は控えましょう。少量の水分補給から始め、消化の良い食事を少量ずつ与えて徐々に通常食に戻していきます。清潔を保ち感染予防に努め、ゆっくりと体力回復を図ります。

再発を防ぐための日常生活の注意点

嘔吐の再発を予防するために、以下の注意を日常的に行いましょう。


  • 感染予防のための手洗いを徹底する。
  • 空腹や長時間の絶食を避け、規則正しい食生活を心がける。
  • ケトン血性嘔吐症の場合、誘因となる空腹や疲労などのストレスを避ける。
  • 食材や食品の衛生管理を徹底する(食中毒予防)。

よくある質問

嘔吐したらすぐに病院へ行くべきですか?
軽度で回数が少なければ様子を見ても構いませんが、症状が続く場合や他の症状を伴う場合は早めの受診が必要です。
嘔吐後すぐに水分を飲ませて良いですか?
嘔吐が落ち着いてから少量ずつ頻回に与えましょう。一度に大量に飲ませないよう注意してください。
腸重積症の腹痛はどのような痛みですか?
激しく間欠的な腹痛が特徴で、子どもが急に泣き出して痛がり、しばらくすると収まることを繰り返します。
ケトン血性嘔吐症はどのように予防しますか?
規則正しい食生活で空腹状態を避け、十分な睡眠と休息をとることで予防できます。
嘔吐したときに経口補水液以外でおすすめの飲み物はありますか?
薄めたリンゴジュースや麦茶、白湯など刺激の少ないものが適切です。
嘔吐時の食事再開はいつからが良いですか?
嘔吐が落ち着き、半日〜1日後くらいから消化の良いものを少量ずつ開始してください。
嘔吐物に血液が混じっていたら危険ですか?
重大な疾患のサインの可能性がありますので、すぐに医療機関を受診しましょう。
嘔吐が落ち着いた後の入浴は可能ですか?
嘔吐が落ち着いて元気があれば短時間のシャワー程度であれば可能ですが、無理は禁物です。

まとめ

子どもの嘔吐は、日常的によくみられる症状であり、軽度の胃腸の不調や一時的なものの場合が多くあります。しかし、中には感染性胃腸炎やケトン血性嘔吐症、腸重積症など緊急性を要する疾患が原因となっているケースもあり、見過ごすと重症化してしまう恐れがあります。

特に感染性胃腸炎は非常に感染力が強く、家庭内や集団生活で急速に広がることがあります。また、ケトン血性嘔吐症は適切な対処を怠ると重度の脱水症状や全身状態の悪化を招きやすく、繰り返しの予防や長期的な管理が必要です。腸重積症に至っては一刻を争う緊急疾患であり、迅速な診断と処置が生命予後を左右します。

そのため、子どもが嘔吐を起こした場合には、症状の頻度や嘔吐の性質、他の随伴症状(腹痛、発熱、意識の変化)などを注意深く観察し、早期に適切な判断と対処を行うことが非常に重要です。また、ご家庭での適切なケアとしては、少量頻回の水分補給、消化に良い食事の再開、感染予防のための衛生管理を徹底することが不可欠です。

岩間こどもクリニックでは、子どもの嘔吐症状に対して詳細な診察を行い、原因となる疾患をしっかり特定して、それぞれに適した治療と対処方法を提供しています。ご家庭での対応に不安がある場合や症状が続く場合は、早めに医療機関に相談することが、子どもたちの健康と安全を守るために最も大切な行動です。

お子さまが安心して元気な毎日を過ごせるよう、ご家庭と医療機関がしっかり連携し、少しでも気になることがあれば遠慮なくご相談ください。私たち岩間こどもクリニックは、子どもたちの健康を守るために全力でサポートいたします。

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