百日咳

whooping_cough

百日咳の基礎知識|原因・症状・治療法から予防接種の重要性まで詳しく解説 - 岩間こどもクリニック(小児科・アレルギー科)

百日咳とは

百日咳は、百日咳菌(ボルデテラ・パータシス)という細菌が原因で発症する感染症です。この病気は、その名前の通り、特徴的な咳が長期間(通常6〜10週間以上)続くことが知られています。特に乳幼児では重症化するリスクが高く、適切な予防と早期治療が重要です。

百日咳は、以前は「子どもの病気」として認識されていましたが、現在では大人にも感染が確認されています。大人の場合、症状が軽度で気づかないこともあり、知らずに乳幼児など免疫力の弱い人に感染を広げるケースがあります。

百日咳の原因菌と感染経路

百日咳の原因は、ボルデテラ・パータシスという細菌です。この細菌は、感染者の咳やくしゃみを通じて広がり、主に飛沫で感染します。感染経路は以下のように分類されます。


  • 飛沫感染
    感染者が咳やくしゃみをすると、細菌が空気中に放出され、それを近くにいる人が吸い込むことで感染が成立します。
  • 接触感染
    感染者が口元を触った手で他の物を触り、その物に触れた人が細菌を口や鼻に取り込むことで感染する場合もあります。

百日咳菌は非常に感染力が高く、免疫を持たない人が接触すると容易に感染します。特に密閉された空間での集団生活(家庭、保育園、学校など)では、感染が拡大しやすい環境が整いますので注意が必要です。

百日咳の主な症状と特徴的な咳の経過

百日咳は、症状の進行によって以下の3つの段階に分けられます。


  • カタル期(初期症状)
    百日咳は、最初は普通の風邪に似た症状で始まります。発熱、軽い咳、鼻水が主な症状で、この段階では百日咳と特定するのは困難です。症状は1〜2週間続きます。
  • 痙咳期(特徴的な咳)
    この段階では、百日咳の特徴である「連続した咳発作」が現れます。咳は非常に強く、乳幼児では息を吸うときに「ヒュー」という笛のような音が聞こえるのが特徴です。咳が続くことで、顔が赤くなったり、乳幼児では一時的に呼吸が止まることもあります。痙咳期は2〜4週間続くことが多いです。
  • 回復期
    咳の頻度が徐々に減り、体力が回復していきます。ただし、完全に咳が治まるまでには数週間から数か月かかることがあります。

百日咳の潜伏期間と感染力の強い時期

百日咳の潜伏期間は7〜10日程度ですが、症状が現れるまで長い場合で3週間かかることもあります。この潜伏期間中も感染力があり、特に以下の時期に注意が必要です。

  • 感染力が最も強い時期
    初期症状が出始めてから咳が特徴的になるカタル期の終わり頃まで(発症から約3週間)。
  • 抗生物質による感染力の低下
    適切な抗生物質治療を受けた場合、治療開始後5日間で感染力はほとんどなくなります。

感染者は特に周囲への配慮が必要であり、早期に診断を受けて適切な対応を行うことが感染拡大防止につながります。

百日咳が引き起こす合併症とリスク

百日咳は特に乳幼児で合併症を引き起こす可能性が高く、注意が必要です。以下は代表的な合併症です。


  • 肺炎
    百日咳菌が気道から肺に広がることで発症します。呼吸困難を引き起こす重篤な状態となることがあります。
  • 中耳炎
    咳や鼻水が原因で耳に感染が広がり、中耳炎を発症する場合があります。
  • 脳症
    咳による低酸素状態が長く続くことで、まれに脳炎や脳症を引き起こすことがあります。
  • 乳幼児の無呼吸発作
    咳発作が続くことで一時的に呼吸が止まる場合があり、特に乳幼児では生命に関わる場合があります。

これらの合併症を防ぐためにも、早期の診断と適切な治療が不可欠です。

百日咳の診断方法と医療機関での対応

百日咳の診断は、問診や症状の観察、さらには検査によって行われます。特に乳幼児の場合、特徴的な咳が現れる痙咳期に診断されることが多いですが、以下の方法が使用されます。


  • 問診
    医師は、患者の症状や咳のパターンについて詳しく尋ねます。特に、「連続する咳発作」「息を吸うときのヒューという音」が特徴的な場合、百日咳が疑われます。
  • 鼻や喉からの細菌検査
    鼻や喉の分泌物を採取し、百日咳菌が存在するかを調べる検査が行われます。この検査は初期症状が出ている間に行うと、診断精度が高くなります。
  • 血液検査
    百日咳に感染している場合、白血球の一種であるリンパ球が増加していることが多いです。血液検査によって炎症の状態も確認されます。
  • PCR検査
    近年、PCR検査が百日咳の迅速かつ正確な診断法として普及しています。
  • 医療機関での対応
    百日咳と診断された場合、早期に抗生物質治療を開始します。また、周囲への感染拡大を防ぐため、感染者には咳エチケットや外出制限が指導されます。

百日咳の治療法と家庭での対処法

日咳の治療は、病状の進行を抑えることと、合併症を防ぐことを目的に行われます。以下が一般的な治療法と家庭でのケア方法です。

抗生物質治療

百日咳菌を排除するために、マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)が使用されます。抗生物質治療は早期に開始するほど効果的です。

症状の緩和

  • 咳止め
    一部のケースでは、咳を抑える薬が処方されることがあります。
  • 吸入療法
    呼吸を楽にするため、吸入器を使用する場合もあります。

家庭での対処法

  • 水分補給
    : 咳による脱水症状を防ぐため、こまめに水分を摂取させます。
  • 湿度の調整
    部屋の湿度を適切に保つことで、咳を和らげる効果があります。
  • 安静
    十分な休養を取り、体力を回復させることが大切です。

治療を受ける際には、家族や周囲の人々への感染予防も徹底する必要があります。

百日咳は予防できる?

百日咳は、定期予防接種によってほぼ完全に予防することが可能です。日本では、百日咳に対する予防接種は5種混合ワクチンとして行われています。

接種スケジュール

  • 生後3か月〜1歳の間に3回(1期初回接種)
  • 初回接種から1年後に1回(1期追加接種)
  • 小学校入学前(11〜12歳)に1回(2期接種)

なぜ接種が重要なのか

百日咳は非常に感染力が高く、免疫を持たない人に容易に広がります。特に、ワクチン未接種の乳幼児が感染すると重症化しやすいため、予防接種による免疫獲得が最も効果的な対策です。

また、大人がワクチン未接種の場合、症状が軽いために気づかないまま感染を広げてしまうことがあります。妊娠中や乳児と接触する機会がある人は、接種履歴を確認し、接種回数が不足している場合は追加接種を検討することが推奨されています。

百日咳と似た症状を持つ病気との違い

百日咳は特徴的な咳が続く病気ですが、似た症状を持つ他の病気と区別が必要です。以下に主な病気との違いを示します。

  • 風邪や気管支炎
    百日咳と同様に咳が主な症状ですが、風邪や気管支炎では咳が連続的になることは少なく、発熱や倦怠感が主症状です。
  • クループ症候群
    咳が犬吠様(犬の吠えるような音)になることが特徴です。一方、百日咳では息を吸うときの「ヒュー」という音が特徴的です。
  • 肺炎
    肺炎では咳のほかに、高熱や息切れが目立つ場合が多いです。百日咳では発熱は軽度で、主症状は咳です。
  • 喘息
    喘息では咳や呼吸困難が発作的に起こることがありますが、発作の間は症状がないことが多いです。百日咳では咳が数週間続くのが特徴です。

正確な診断を受けるためには、医療機関での検査が欠かせません。

赤ちゃんや妊婦が百日咳に感染した場合の注意点

百日咳は特に赤ちゃんや妊婦にとって重大な影響を与える可能性があります。赤ちゃんでは重症化や合併症が起こりやすく、妊婦が感染した場合は胎児にも影響を及ぼす可能性があります。

  • 赤ちゃんへの影響と注意点
    百日咳に感染した赤ちゃんは、咳発作のために呼吸困難に陥ることがあります。特に5種混合ワクチンを接種していない赤ちゃんは、免疫がなく重症化しやすいです。
  • 注意すべき症状
    ・咳発作による無呼吸やチアノーゼ(唇や指が青紫になる)
    ・食欲不振や哺乳困難
    ・発熱や不機嫌
    早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
  • 妊婦への影響と注意点
    妊婦が百日咳に感染すると、胎児に直接影響することは少ないものの、妊婦の体力低下や呼吸困難が問題となる場合があります。また、生まれたばかりの赤ちゃんが感染するリスクが高まるため、妊婦や周囲の人々が予防接種を受けることが推奨されています。

百日咳流行時期の注意点と感染を防ぐ生活習慣

百日咳は年間を通じて発生しますが、特に春から夏にかけて流行する傾向があります。この時期には感染予防策を徹底することが重要です。

流行時期の注意点

  • 人混みを避ける
    特に免疫が低い乳幼児を連れての外出時には、人混みを避けるようにしましょう。
  • 感染の早期発見
    強い咳が2週間以上続く場合は百日咳を疑い、早めに医療機関を受診してください。

感染を防ぐ生活習慣

  • 手洗いの徹底
    外出先から帰宅した際や食事前には手洗いを徹底しましょう。>外出先から帰宅した際や食事前には手洗いを徹底しましょう。
  • 咳エチケット
    咳やくしゃみをする際はマスクやハンカチで口を覆い、飛沫が広がるのを防ぎます。
  • 予防接種
    定期接種(5種混合ワクチン)を確実に受け、免疫を獲得することが最も効果的な予防策です。
  • 部屋の換気
    室内にこもった細菌やウイルスを排出するため、定期的に換気を行いましょう。

よくある質問と回答

百日咳は大人でも感染しますか?
はい、大人でも百日咳に感染する可能性があります。大人の場合、症状が軽度で気づかないことが多く、無意識のうちに周囲に感染を広げてしまうケースが見られます。
百日咳は予防接種だけで防げますか?
予防接種は非常に効果的ですが、100%感染を防げるわけではありません。しかし、ワクチンを接種することで症状が軽減され、重症化を防ぐことができます。
百日咳は自然治癒しますか?
百日咳は自然治癒する場合もありますが、治療を受けないと咳が長期間続き、合併症のリスクが高まります。早期に適切な治療を受けることが重要です。
百日咳にかかったことがある人でも再感染しますか?
百日咳に一度感染した人でも、時間が経つと免疫が弱まるため再感染することがあります。予防接種を定期的に受けることが推奨されます。

岩間こどもクリニックの百日咳予防接種と診療サポート

岩間こどもクリニックでは、百日咳に対する予防接種をはじめ、診断・治療に対応しています。特に、ワクチン接種スケジュールの管理や予防接種後のフォローアップを丁寧に行っています。

また、百日咳が疑われる症状がある場合には、迅速に診断と治療を提供し、患者さんとそのご家族が安心して治療を受けられる環境を整えています。感染予防や症状に関する疑問があれば、ぜひ岩間こどもクリニックまでご相談ください。

TOP